亡くなった小林亜星さんで思い出される「E電」 鉄道は公募名称が受難の時代へ

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誇らしげだった阿川さん

 私は、2019年6月23日にオンエアされたテレビ朝日系列「ビートたけしのTVタックル」に出演したことがある。同番組はビートたけしさんと阿川さんがW司会を務める。
収録前、スタジオの隅で阿川さんにあいさつするチャンスがあり、その際に「のぞみ」のエピソードを聞くことができた。

 阿川さんは「父が鉄道好きで、私はてっちゃん(=鉄道マニアのこと)じゃないんですけど…」と、照れながらも誇らしげに語った。阿川さんの口調が誇らしげだったのは、「のぞみ」が国民的な名称になっているからだろう。これが、E電のように忘れられた存在だったら、その口ぶりは違っていたはずだ。

 小林さんの訃報を耳にしたとき、E電や「のぞみ」のことを思い出した。E電は小林さんが一人で決めたわけではなく、委員会の話し合いで決められた。だから、小林さんが気に病むことなかったかもしれない。

 とはいえ、E電という名前にまったく思い入れがなかったわけではないだろう。やはり、心のどこかでE電のことを案じていたのではないだろうか?と。

 高輪ゲートウェイ駅の鮮烈な印象が残っている中、JR東日本は2023年に京葉線の新習志野駅-海浜幕張駅間で開業する新駅の名称を公募すると発表した。新駅の公募は6月30日まで受けつけている。

 同駅の公募に「高輪ゲートウェイ駅の悪夢が再び繰り返されるのではないか?」と心配する声があがるのは自然な成り行きだろう。

 幕張新駅は、「のぞみ」のように広く愛される名前がつけられるのか? それともE電や高輪ゲートウェイ駅のようになってしまうのか? 発表と同時にSNSでは大喜利大会の様相を呈している。それだけに不安ばかりが募る。

小川裕夫/フリーランスライター

デイリー新潮取材班編集

2021年6月24日掲載

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