中国「ファンクラブ解禁」で日本の芸能界が注目する“大物中国人”にトラブル発覚

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中国進出に向けての足場となる「微博」

 一昔前まではファンクラブは、年に数回、会報誌が届けられるだけのサービスしかなかったが、近年は芸能事務所にとって重要なドル箱となっている。プラットフォームさえ築いてしまえば、年会費に加え、物販、映像配信、アプリ、チケット販売など、あらゆる芸能活動をマネタイズできるからだ。

 すでに中国向けの「足場」を持っているタレントたちは多い。微博のフォロワー数は中国での芸能活動の潜在能力を指す。倉木麻衣317万人、木村拓哉258万人、GACKT41万人……。彼らにとって、中国でのファンクラブ開設はビッグチャンスなのである。

 だが、S氏には微博と人脈はあるものの、ファンクラブ運営のノウハウは持っていない。そこで、ファンクラブ運営を専門とするIT企業と手を組むことになったという。その会社が株式会社SKIYAKI。同社は、TSUTAYAを展開するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)傘下の、約600アーティストのファンクラブを運営する最大手である。だが、両者の提携話が、契約一歩手前で破談となってしまったというのだ。

 関係者が続ける。

「昨年の5月くらいから、S氏はSKIYAKIの社長と意気投合し、話を進めてきました。運営は技術を持ったSKIYAKIに任せる。S氏側の仕事は中国側の体制を整えることで、実際、S氏も含め何度もスタッフが中国に入り、政府の関係窓口との折衝を進め、現地でサーバーをレンタルしたり、プログラマーを雇ったりと先行投資して進めてきた」

 やはり、コネクションを使って、中国政府と調整していくことが一番大変だったようで、

「例えば、中国での決済は今やすべて電子マネーが基本。今回は中国有名IT企業の決済システムを使うことになりましたが、この許可1つ取るのも大変な苦労だったそうです。サーバーも政府が指定するものなので、資本金が何億以上ある会社だとか、本社の人間が北京にいけないなど、幾重もの厳しい基準をクリアしなければレンタル出来ない。当然、そんなややこしい話をまとめあげていくには、政府のコネが必要だし、コネを回していくにはそれなりの労力が必要です」

契約一歩手前で……

 SKIYAKIの社長はこの新規ビジネスに前向きで、昨年10月くらいには、「プレスリリースを発表したい」とS氏側に申し入れてきたという。年末には、現地でレンタルしたサーバーにSKIYAKIのスタッフも入り、テストを繰り返す段階まで話が進んだ。そのうち、SKIYAKI側から契約書も送られてきて、

「あとは判子を交わすだけ段階というところで、突然、SKIYAKIの社長が退任し、新たな体制に変わってしまった。その直後、突然、SKIYAKI側からS氏に白紙にしたいと言ってきたんです。S氏は『いったい今までの話は何だったんだ』と激怒して、説明を求めた。だが、向こうは『まだ契約していなかった』と答えてくるばかり。確かに両者は契約を交わしてはいませんでしたが、社長同士で口頭上は契約を交わしていたというのがS氏側の主張。そうでないと、何度も中国まで足を運んで、多額の持ち出しをするわけがないじゃないかとS氏は憤懣やるかたない様子です」

 S氏はどう答えるか。Zホールディングスに話を聞くと、担当者は事実関係をおおよそ認めた上でこのように答えた。

「使ったお金を返してほしいと彼らに請求していますが、向こうは『契約していないから債務はない』の一点張りです。でも、実はお金の問題では済まされないんです。私たちは、このビジネスを動かしていくため、現地で優秀なエンジニア5、6人を引き抜いてもいる。彼らの生活をどうするつもりなのか。それだけでない。今回、事業を進めていくにあたって、中国政府関係者に協力をお願いしています。彼らからいま『いったいどうなっているんだ』と激しい抗議が来ています」

芸能界への影響

 一方のSKIYAKIはこのように回答した。

「ご指摘の会社と当社が事業に関し合意に至った事実はございません。詳細については差し控えますが、当社として何らかの法的責任を負うものとは考えておりません」

 Z社の担当者によれば、被害を被ったのは自分たちだけではなく、日本の芸能界全体だという。

「中国でのファンクラブ開設を待ち望んでいる芸能人は数多くいます。しかし、こんな展開になって彼らも困っている。中国はメンツを重んじる国です。今回の件で中国側の態度が硬化し、日中の文化交流に影響が出てしまう可能性も否定できません」

 S氏は訴訟も辞さないと息巻いているというが、果たして争いの行方は……。

デイリー新潮取材班

2021年6月10日掲載

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