応援旗のせいで新庄剛志の本塁打が幻に…観客によるあり得ない「妨害事件史」

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“マーシャル事件”

 5月1日の楽天vsロッテで、観客の守備妨害で打者がアウトになる珍事が起きた。4回の楽天の攻撃で、小深田大地が左翼ファウルゾーンに飛球を打ち上げた直後、スタンドから身を乗り出した男性ファンが、手を伸ばしてボールに触れたため、捕球態勢に入っていた角中勝也は視界を遮られ、落球してしまった。当初はファウルと判定されたが、ロッテ・井口資仁監督がリクエストを要求し、リプレー検証の結果、観客の妨害がなければ捕球できたとして、アウトになった(記録は左邪飛)。

「ファンの守備妨害」として注目を集めたが、2016年にも楽天のオコエ瑠偉が小深田と同様の状況でアウトを宣告されるなど、過去にもいくつか事例がある。

 本塁打が取り消されたばかりでなく、一転アウトになった“マーシャル事件”が起きたのは、1964年6月17日の巨人vs中日である。

 2点を追う中日は5回2死、3番のジム・マーシャルが左翼フェンス際に大飛球を放った。レフト・相羽欣厚がフェンス一杯にグラブを伸ばしたが、打球はグラブの先をかすめて、スタンドに飛び込んだように見えた。

 ソロホームランで1点差と思われた直後、打球の行方を凝視していた鈴木徹線審は、「アウト」をコールした。すでに三塁に達していたマーシャルは激怒し、鈴木線審に目がけて突進したが、ナインに取り押さえられ、「こんなことは初めての経験だ」と不満をあらわにした。

 これに対し、鈴木線審は「相羽選手が塀際に吸いつき、ジャンプしたとき、そのグラブの上からファンが手を出して捕球したため、私はファンの手がなければ完全に捕球したものと認め、打者アウトの判定を下した」と説明した。

 だが、中日・西沢道夫代理監督は「審判はインフィールドと言っているが、(スタンド内に入ったので)フェンスにピッタリついている相羽のグラブに入らなかったのではないか」と譲らず、試合は22分中断した。

 目撃者の話によれば、ボールを捕ったのは、メガネをかけた青年で、そのままボールを持って逃げてしまったという。相羽の捕球を妨害したのか、それとも、スタンドに入った“ホームランボール”を持って、そのまま姿をくらましたのか、真相は今でも不明のままである。

「つらいです」

 これまた本塁打が幻と消えるファンの妨害事件として知られているのが、95年6月20日の横浜vs阪神だ。

 1点を追う阪神は9回、先頭の新庄剛志が佐々木主浩から左中間に起死回生の同点弾を放ったかに見えた。ところが、フェンスを越えようとした新庄の打球は、最前列で阪神ファンの男性が振り回していた応援旗に包まれるようにして、グラウンドに叩き落とされてしまう。旗は皮肉にも新庄を応援するものだった。

 田中俊幸球審が「二、三塁の塁審にオーバーフェンスでないことを確認した。旗に巻きついた時点でボールデッドとなり、ツーベースとして試合を再開します」と宣告すると、激昂した阪神ファンがグラウンド内にメガホンやビールなどを投げ込んだため、試合は8分中断してしまった。

 そして、無死二塁で再開された試合は、あと一打が出ず、3対4でゲームセット。旗を振っていた21歳の男性は「打球はフェンスより上だったと思う。つらいです」と落ち込み、新庄も「入った、入らないは、もういいです。僕の応援旗というのも知っていた。応援はうれしいけど、攻撃のリズムを中断されては……」と眉を曇らせていた。

 ちなみに、新庄は日本ハム時代の2004年4月17日のロッテ戦でも、右翼席のファンが身を乗り出して打球をグラブでキャッチしたことから、本塁打を二塁打に格下げされている。

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