無限好守の西武「源田壮亮」、珍プレーでもファンを虜にする“たまらん魅力”

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落下してきたボールがゴツン

 2年連続で全試合フルイニング出場し、初のゴールデングラブ賞に輝いた翌18年も、源田は5月26日の日本ハム戦で珍事件の主人公となる。

 異変が起きたのは、西武が3回の守備に就こうとしたときだった。ショートを守るはずの源田が、ベンチの前でユニホームの背中に手を入れながら、困惑した表情で立ち尽くし、ナインも心配そうにのぞき込んでいる。どうやら、背中に虫が入り込んでしまったようだ。

 実は、源田は虫が大嫌い。前年11月、アジアプロ野球チャンピオンシップの日本代表メンバーに選ばれた際にも、中日・又吉克樹がいたずらでカマキリを持ってくると、怖がって練習できなかったという話も伝わっている。

 この日の試合前のノックの際にも、虫が源田に目がけて飛来し、しつこく付きまとっていたので、心ここにあらずの状態だった。

 それほどまでに嫌いな虫が背中をモゾモゾ這い回っているのだから、守備に就くどころではない。木村文紀らに助けを求め、ようやく取り除いてもらうと、苦笑しながら守備位置へと走っていった。

 さらに、2年連続ゴールデングラブ賞に加えて、3年連続30盗塁以上を記録した19年も、8月20日の日本ハム戦で、源田は“不思議ワールド”を演出する。

 5回、秋山翔吾の右前2点タイムリーで逆転し、なおも1死一、三塁のチャンスで打席に立った源田は、ロドリゲスのスライダーを打ちにいったが、バットがグリップの部分だけを残してポッキリと折れ、打球は捕手・宇佐見真吾へのフライになった。

 突然の出来事に、源田は呆然と打席にとどまったまま、折れて飛んでいったバットの行方を目で追っていたが、直後、一塁方向に飛球を追いかけようとした宇佐見と交錯。背中を押された源田が2、3歩前進したところで、落下してきたボールが頭部にゴツンと当たった。

 結果的に宇佐見の捕球を妨げた源田には守備妨害でアウトが宣告され、ネット上で「可愛い珍プレー」と反響を呼んだ。また、故意の妨害ではなかったことから、野球評論家の張本勲氏が打者の立場から「ちょっと厳しいかな」と擁護するなど、判定の是非をめぐり、論議を呼んだことも記憶に新しい。

 スーパープレーと珍プレーの両面で人気者になった選手といえば、かつての新庄剛志を思い出させるが、源田もその域に迫りつつある。開幕から故障者が相次いだチームの状態は万全ではないが、源田が“攻守のキーマン”として浮上のカギを握っている。

久保田龍雄(くぼた・たつお)
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍「プロ野球B級ニュース事件簿2020」上・下巻(野球文明叢書)

デイリー新潮取材班編集

2021年5月15日掲載

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