原発処理水放出を「核テロ」と訴える韓国団体も 米国は反対要請を拒絶 「日本食品もどき」がヒット

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商魂たくましい「日本食品もどき」

 もっとも、昨年10月に韓国原子力安全委員会が「処理水の海洋放出は問題ない」という主旨の報告書を作成していたことも明らかとなっている。

 同委員会は「汚染水を浄化する日本の多核種除去設備(ALPS)の性能に問題がない」ことを確認したうえで、原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)の定める手法で日本列島周辺海域の放射線影響を分析した結果、放射線数値は「妥当だ」と評価。

 さらに、「海洋放出から数年後に韓国の海域に到達しても、海流によって移動しながら拡散・希釈され、水産物摂取などによる被ばくの可能性は極めて低い」と結論付けていたのだ。

 ご存知の通り、世界各国の原発は同様の処理水を海洋放出しているし、韓国も例外ではない。日本にのみ特別な基準を押し付けることは、原子力安全委員会の担当者も科学者としての良心がとがめたのかもしれない。

 ただ、今回の処理水放出決定とは関係なく、そもそも韓国政府は2011年5月以降、日本産食品を輸入する際、日本政府が発行する放射能関連証明書の提出を義務付けており、さらに、通関前にも放射能検査を実施するという二重の検査体制を敷いてきた。

 したがって、スーパーやデパートで人気のある日本産食品を輸入して並べるのにハードルは依然として高いままなのだ。

 もっとも、そのハードルを逆手にとって「日本食品もどき」を韓国で開発・製造する商魂たくましい韓国企業も現れている。韓国内での流通なら厳しい検査は不要というわけだ。

 新世界・イーマートグループはその1つで、ドラマ「深夜食堂」をモチーフにした東洋食品の「深夜食堂」シリーズやCJ食品の「カツオうどん」をいち早く店頭に並べ、消費者の評判も高いという。

 普通に日本の食材や商品を流通させたほうが、韓国の消費者にとっても喜ばしいことなのでは、と思うのだが、振り上げた拳の下ろしどころが見つかっていないというのが現状のようだ。

佐々木和義
広告プランナー兼コピーライター。駐在員として渡韓後、日本企業のアイデンティティや日本文化を正しく伝える広告制作会社を創業し、日系企業の韓国ビジネスをサポートしている。韓国ソウル市在住。

デイリー新潮取材班編集

2021年5月10日掲載

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