28枚の「小室文書」に拒絶反応を示す日本人特有の感情 欧米人との明らかな違い

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「世間様に迷惑をかける」

 日本人は子供の時から「他人に迷惑をかけてはいけない」と教わる。これを昔の人は「世間様に迷惑をかけてはいけない」と諭した。

「東日本大震災で日本人が略奪行為を起こさなかったのも、コロナ禍で多くの人が自主的にマスクを付けるのも、全て『世間様に迷惑をかけてはいけない』という考えがしみ込んでいるからです。日本人は『安定した状態、秩序』を維持しようと心がけており、それを乱した者は『世間に迷惑をかけた』と判断されます。その場合は正否を問わず、なるべく早く、とりあえず謝罪しなければならないのです」(同・佐藤氏)

 不倫が刑法に抵触するはずもない。本来なら謝罪は不要だろう。欧米の芸能人が不倫で謝る姿は想像しにくい。

 だが日本の場合、不倫が発覚した芸能人はとりあえず謝罪し、それを日本社会は受け入れる。不倫報道によって「平穏な日常が乱された」からだ。

 謝罪と同時に反論するというケースもある。2009年、徳島県の町長は飲食店内で女性に暴行を加えたとして2回も書類送検されたが、地検は共に起訴猶予とした。

 11年、検察審査会は起訴相当を議決。強制起訴の結果、13年2月、地裁で科料9000円の有罪判決が下った。町長は記者会見を開き、「公職にある者としてお騒がせし、ご迷惑をおかけし、おわび申し上げます」と謝罪した。

法律より世間のルール

 その一方で、地裁の判断については「不当な判決で、辞めるつもりはない」と明言した。謝りたいのか反論したいのか、町長の発言は矛盾しているように思える。

 だが、前半は「平穏な日常を乱して申し訳ない」という世間に対する謝罪であり、後半は判決という法律を巡る反論だと考えれば、少なくとも日本人は納得できる。とりあえず謝罪することと、賠償は別という考えと全く同じだ。

「こうした世間のルールは、暗黙のルールとして1000年以上前から存在しているものです。一方、近代法が日本にもたらされたのは明治維新、つまり19世紀の出来事に過ぎません。日本人にとって真に重要なルールと言えば、依然として法律ではなく世間の不文律なのです」(同・佐藤氏)

 小室氏は日本の法律事務所で勤務し、今はニューヨークの法科大学院で学んでいる。法曹の世界に身を置いていることが、文書に影響を与えた可能性もあるという。

「裁判官、検事、弁護士といった法曹家の中には、『世の中は法律で回っている』と考えている人はいます。法律は万能であり、この世のトラブルを全て完璧に解決できるというわけです」(同・佐藤氏)

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