辛口コラムニストが選ぶ「お勧めのドラマ4本」 良質なコメディが増えた背景は?

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 辛口コラムニストの林操氏が、珍しく今シーズンのドラマを褒める。いずれもコメディドラマで、それは昨シーズンからの流れという。ところが、ふだん褒め慣れないせいか、話は放送文化論に発展。はたして、そこから読み解けるものとは?

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アナ:TVの世界では2020年度を締めくくる1~3月期が終わり、新たな21年度のスタートとなる4~6月期が始まっています。番組の改変が最も多い、この年度替わりシーズンのTVについて、非国民生活センター・TV主席研究員の林操さんにうかがいます。

林:もうゴールデンウィークだもの、新年度到来からひと月も経って、特に目新しい話もないけどね。

アナ:まずはやはりワイドショー、特にTBS系とフジ系で一度に新番組に切り替わった朝のワイドショーはいかがでしょうか。

林:そりゃ「ラヴィット!」も「めざまし8」もチェックはしましたよ、一応ね。でも、褒める箇所が見当たらないどころか、貶す価値さえ見つからない。無関心と黙殺、それ以外にやることがありません。

アナ:そこまで……。

林:それよりドラマの話、しようよ、ドラマの話!

アナ:また悪口でしょう?

林:悪口、してもいいならいくらでもあるけれど、今回は悪口以外もけっこうあるのよ。ワイドショーをますます見なくなる一方で、今年に入ってからは連ドラを見る時間が確実に増えてますから、ワタシ。

アナ:おお! TV研究員を名乗っているくせに最終回までちゃんと見た連ドラの本数の少なさを誇る林さんが、最近はドラマを見る時間が増えている? それは面白い作品が増えているということですか。

林:そうそう。1~3月期は2本、最終回までちゃんとつきあえた連ドラがあったし、今期はまだスタートしてない連ドラもある中ですでに2本、次回が楽しみな作品に出くわしてます。

アナ:どの作品ですか、教えてください。

みんなコメディ

林:まず前四半期の2本は……

●「俺の家の話」(TBS系・金曜夜10時~)
●「にじいろカルテ」(テレ朝系・木曜夜9時~)

……の2本で、今四半期の2本が……

●「大豆田とわ子と三人の元夫」(フジ系・火曜夜9時~)
●「コントが始まる」(日テレ系・土曜夜22時~)

……です。

アナ:おお、何か1本スジが通っているようでもあり、でも、まったくデタラメのようでもあるラインナップですね。

林:褒められてる気がしないけど、まぁ、そのとおりかもね。ただ、冗談でもTV主席研究員を名乗っている以上、好き嫌いを超えた理屈もあるのよ。

アナ:確かに。まずひとつ思いつく共通点は、4作品のどれもすべてコメディですよね。サスペンスやミステリーの色はないし、登場人物の死が描かれる作品でも眉間に皺が寄りっぱなしになるようなシリアスさはありません。

林:おお、正解! 4本ともコメディなのよ。ただし、ニッポンでよく言う喜劇、笑いを取ることを第一目標に掲げてる軽いお芝居じゃなく、トラジディ(悲劇)ではない劇という、元来の意味でのコメディ。

アナ:「俺の家の話」の最終回は悲劇といえば悲劇でしたが。

林:見てない人のために詳細はボカすけれど、最終回の主人公の運命の急変、あれでドラマが終わっていれば悲劇だったけれど、実際には最後に数年後のシーンを挿入することで、なんとか、でも、ちゃんとコメディになってた。ほら、「喜劇とは対岸の悲劇」って言うでしょ。悲劇から距離を置くことで喜劇になる。

アナ:「にじいろカルテ」も、死や障碍とは無縁ではいられない医療ドラマでしたが、そこを深刻に、神聖に捉えすぎない柔らかさが印象的でした。

林:そうそう。あのドラマを見ると、同じ医療モノであるはずの「ドクターX」あたりが趣味の悪いブラックジョークであることがよくわかる。「失敗しないんです」とうそぶく水戸黄門的ヒロインの連戦連勝の舞台は、“患者を死なせたら負け”という薄っぺらなゲームなんだから。

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