コロナ特効薬「カモスタット」とは 早ければ5月に治験終了、実際に使用した患者の声は

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強い抗ウイルス効果

 実は、iPS細胞を用いた検証も行われ、カモスタットに強い抗ウイルス効果が認められた、と報告されていた。検証した京都大学iPS細胞研究所講師の高山和雄氏が説明する。

「新型コロナウイルスが人の細胞に入り込む際に媒介にする、ACE2受容体を発現させた未分化のiPS細胞を使って実験しました。iPS細胞とは、そもそも体のどの細胞にもなれる細胞のこと。未分化というのは、まだどの部位の細胞になるかわからない状態のことをいいます。iPS細胞にはもともとACE2受容体がないので、新型コロナウイルスが入ることはありませんが、今回は実験のために、あえて受容体を発現させました。その結果、カモスタットのほかレムデシビルにも、強い抗ウイルス効果があり、ウイルスが細胞に入りにくくなることがわかったのです」

 具体的には、どういうことだろうか。

「新型コロナウイルスの感染において、プロテアーゼの一つであるTMPRSS2という酵素が非常に重要です。ACE2受容体に新型コロナウイルスがくっつき、ウイルスのタンパク質の一部をこのTMPRSS2が切断することで、ウイルスは細胞のなかに入ることができるようになります。そのTMPRSS2の働きをカモスタットが阻害し、ウイルスが細胞に入らないようにしてくれるのです」

 では、どれくらい飲めばよいとされているのか。東京歯科大学市川総合病院の寺嶋毅教授によると、

「用量はすい炎患者の場合、1回2錠を1日3回なのに対し、コロナ患者は1回6錠を1日4回服用する必要がありそうです。この用量については、昨年6月以降行われた第1相、第2相の臨床試験で安全性が確認されているはずです」

実際に使用した患者の声

 ワクチンがいまなおファイザー社製しか承認されていない日本は、コロナ禍における世界の天然記念物も同然である。しかし、せめてカモスタットは治験結果が出次第、すみやかに承認してほしい。パルスオキシメーターを見ながら、ただ不安を抱えて過ごすしかない自宅療養者にとっても、どれだけ心強い存在になることだろうか。

 この薬にすがった患者もいた。都内在住の50代の女性が語る。

「PCR検査で陽性で、血糖値が高く、肥満体型でもあり、ホテル療養や入院を勧められましたが、一人暮らしで老いたペットもいるので、自宅療養を選びました。実は、以前にカモスタットを飲んだ人が無症状のままだったと聞き、すぐにクリニックで処方してもらい、毎日100ミリグラム×3回服用しました。無症状で済んだのがカモスタットのおかげかわかりませんが、自宅療養って不安だけがじわじわ来る。なにかを飲んでいる安心感から、気持ちは安定していました」

 たしかに、コロナ向けに、保険適用外のままカモスタットを処方している医師もいる。その一人、東京都練馬区のさんくりにっくの内田義之院長が言う。

「私の専門は呼吸器科で、SARSや新型インフルエンザの流行時から、私自身、予防に服用し、数十名の患者さんにも処方してきました。今回も本格的なコロナ禍に入る前の昨年1月から、医師として予防のために毎日飲んでいます。患者さんには昨年3月から400人以上に処方しました。ほとんどは予防のためで、その方たちに重篤な副作用が出た方はおらず、新型コロナに感染したという報告もありません。数名の新型コロナ陽性者にも処方しましたが、みなさん症状が軽快し、昨春40度以上の熱が続いた20代の女性も、すぐに熱が下がりました。予防の場合、副反応のリスクを鑑みて1日3回、1回1錠を、陽性の患者さんには同じく1回2錠を服用してもらいます。すい炎などへの処方は保険適用なので、1錠10円ほどですが、コロナに対しては自由診療です。でも、1錠換算で30円ほどなので、保険適用とくらべ、さほど高くありません」

 灯台下暗し、だろうか。昔からある日本発の安価な薬が効くとしたら、これほどうれしいことはない。よい治験結果を受けてすみやかに承認、という展開を強く望まずにはいられない。

週刊新潮 2021年4月29日号掲載

特集「兵站なき『コロナ戦線』総崩れ」より

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