銀座に出現した「投資家バー」を訪問 連日満席の理由は

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 店は銀座8丁目の古びたビルの4階にある。きっと仕手株を業とする目つきの鋭い男たちがトグロを巻いているのだろうと扉を開けたら、そうではなかった。

「いらっしゃいませ! すみませんが、いまいっぱいなんです」

 従業員が申し訳なさそうな顔を見せるが、まだ夕方の5時半である。しかも、午後9時の閉店まで満杯だという。店内をのぞくと客層は30代が中心か。3割ぐらいが女性だ。

 銀座コリドー街の一角に「投資家バー STOCK PICKERS」が開店したのは、3月8日のこと。カウンターとテーブルで25席とこぢんまりした空間である。派手な宣伝もしていないのに、夕方になると客が集まってくる。

 実はこの店、オープン前からネットで話題になっていた。店から出てきた客の一人が言う。

「外資系金融機関でファンドマネージャーをやっている〈上原@外銀→投資家〉という人物が、ツイッター上に“投資家が集まるバーを東京に作りたい”と書いたのがきっかけです。同氏には4万4千人のフォロワーがおり、クラウドファンディングで開店資金を募ると、すぐに約570万円が集まったのです」

 投資家が集う店らしく「追証」「リーマンショック」や「ブラックショールズ」なんて難しそうな名前のカクテルがメニューに並んでいる。現物株はもちろん先物・オプション取引を手掛ける猛者も大歓迎ということらしい。

 共同経営者の山本陽介氏によると、

「お陰様で今は満員のことが多いのですが、一人で来ても別のお客さんと気軽に話ができるというのがコンセプトです。投資は日本株もあれば米国株もある。もちろん、デイトレードと長期投資とでは手法が違う。そこで店員がさりげなく投資スタイルを聞いて、同じ手法のお客さんを紹介してくれるようになっています」

 それにしても、伝わってくるのは1980年代後半のバブル期を思わせる異様な熱気である。待っていると、ひと席だけ空いたという。さっそくカクテルを頼むと、ガツンとしたウオッカにカンパリのほろ苦さが追いかけてくる。

 なるほど、これが信用取引で失敗した時の「追証」の味か。

週刊新潮 2021年4月15日号掲載

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