「24 JAPAN」が残した教訓は「海外原作には手を出すな」 悪夢のような大惨敗を歴史に刻むべし

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 2クールぶち抜きで全24話。放送が始まる前は多少話題にもなっていたけれど、開けてみれば大惨敗。もう4話あたりからは視聴率すら確認困難に。あまりにいたたまれない。20年前のドラマのリメイクに高い金を払わされて、いちいち口を出されて。アメリカにポンコツ戦闘機を買わされる日本政府と重なるんだよね。

 いっそのこと日本版は時代劇にしちゃったほうがよかったのでは? 「二十四」っつって、子の刻とか丑三つ時とか刻んで、かの国の人たちが好きそうな侍と忍者と陰陽師も投入して、文化の違いを逆手にとってさ。

 役者や脚本が悪いとかそういう問題じゃなくて交渉の話。いつコレやろうと思った? もっと言えばセンスの話。なんでコレやろうと思った? ま、その人たちは今、テレ朝内で白眼視されて針の筵(むしろ)だろう。でも「制約の多い海外原作モノには手を出すな」という教訓をドラマ界に知らしめた功績は認める。引き際が肝心なのか、金以外に強気の交渉術はなかったのか。あとで諸々検証して暴露してほしい。しくじり先生で。

 あの経過時間の分刻み音と分割画面は完全に逆効果で、20年前の感覚によるテンポの悪さと古臭さが爆発。それでも23話まで観たし、最終話も観る。私なりに記憶に残ったシーンなり、役者なりを書き留めておこう。別の意味で歴史に遺すべし。

 まず、主役の唐沢寿明。24時間の災難を演じるせいか、独自性を出せないせいか疲労感が強烈。逃げる時もしっかりシートベルトを締める間抜けさ。目元が赤みを帯びて涙目にも見える。枕を濡らす日々だったのだろうと妄想。ドラマとは無関係な部分に思いを馳せる。

 劇中最も災難だったのは妻の木村多江。拉致監禁に暴行&レイプを受け、妊娠発覚で体調不良なうえに格闘&逃亡劇を展開、記憶喪失にも。救出されたらされたで、夫の浮気相手で内通者でもあった栗山千明に世話される屈辱。娘の桜田ひよりも同様。まあ、とにかく拉致られまくり。副題は「獅堂さんちのワヤな1日」。

 いかんせん総理大臣候補の仲間由紀恵んちのほうに興味わかず。CTUなる組織もテロリスト一家になぜこんなにやられっぱなし? 「夜のとばり作戦」というネーミングのダサさといい、ネズミ一匹どころかテロリストにまんまと潜入されとる脆弱さといい、心配。

 あれ、記憶に残るシーンが……あ、そうそう、唐沢が謎の社長・テッド福井(飯田基祐)を拉致したときに話した「濡れタオルでカンタンお手軽に胃袋を引っ張り出す地獄の拷問解説」は覚えとる。あとは、ハメるつもりが女に刺されるアレクシス(武田航平)のテロリストの資質の低さとか。案外テロリスト側もヌケサク感満載。人質に逃げられるし、詰めが甘い。前半は下っ端の高橋和也が牽引、後半はアンドレこと村上淳とビクターこと竜雷太の親子が仕切るが、最後は全部栗山が持っていくオチを皆さん知っていたのよね。長い悪夢というか地獄が終わってホッとしているのはテレ朝だけにあらず。役者も視聴者も。お疲れさまでした。

吉田潮(よしだ・うしお)
テレビ評論家、ライター、イラストレーター。1972年生まれの千葉県人。編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。2010年より「週刊新潮」にて「TV ふうーん録」の連載を開始(※連載中)。主要なテレビドラマはほぼすべて視聴している。

週刊新潮 2021年4月8日号掲載

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