片寄が気になっていた「ワインショップの店主との出会い」

片寄涼太(GENERATIONS from EXILE TRIBE)×作詞家・小竹正人 往復書簡 エンタメ 芸能 2021年4月4日掲載

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片寄涼太(GENERATIONS from EXILE TRIBE)×作詞家・小竹正人 往復書簡37

 この往復書簡のやりとりも残り少ないものとなった。コロナ禍に始まり、コロナ禍に終わろうとする連載で、片寄の胸に去来したものとは?

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拝啓 小竹正人さま

 先日、マネージャーさんからこの往復書簡が残り2回のやり取りとなるという連絡をもらいました。

 コロナ禍の時間とリンクするように始まったこの往復書簡があと少しという知らせ…世の状況も少しずつ、会いたい人に会えるようになっていくことを暗示してくれているのかもしれません。

 多くの方々に自由に見ていただける場所で文章を書く経験は僕にとって貴重な財産となりました。

 今まで会員制のモバイルサイトのブログで時折綴ってきたパーソナルな想いに近いものを、小竹さんとのこの往復書簡という場所で表現できたのは新鮮でした。ブログに綴る内容と差別化しようとして、モバイルサイトのほうを多少おざなりにしてしまったことは悔やまれますが…。

 さて、あと残り2回のやり取りでなにを書き残せるのかと考えていたところ、とあるワインショップの店主との出会いがありました。

 店内でグラス一杯から飲めて、そこで飲んだワインはもちろん、店内に並ぶワインからもお気に入りを選んで買って帰ることができるスタイルの店舗が、最近増えてきています。

 僕が仕事の合間によく行く、身体のケアの先生のところからほど近くにもそのような類のお店があり、その店の前を通るたびに気になっていました。

 ですが、そのお店は緊急事態宣言下の自粛要請に従って全く店を開けていませんでした。

 そんなある日の午後、たまたまその店の前を通ると珍しく営業していました。

 これは何かの縁かなあと思い、少し覗いてみることにしました。

 アパレルショップでも酒屋でも、初めての店に入るのは多少緊張感を伴う。

 思っていたのと違うなあと感じたり、直感的に合わないなと感じたりというお店にも出会ってきた。

 ドキドキしながらその店に入ると、店主は入ってきた客を睨むような、怖い顔をなさっていたのです。

 僕は正直、無愛想だなと思いました。

 でも僕は単純にワインが好きだし、前を通るたびに気になっていたお店だから一通りどんなものが置いてあるのか見てから出ようと思いました。

 いろいろと見ていくなかで、このお店に置かれたワインは僕の好みとかなり重なる部分があることに気づき、気持ちが高まっていきました。

 この店と出会ったのも縁かもしれないと思い、無愛想だなと思った店主に話しかけてみました。

「ワインがすごく好きなんです。素敵なラインナップですね。」

 すると店主は、「ありがとうございます。僕が好きなものを置いてるだけなんです。趣味みたいなもんです」とのこと。

 ワインについて話をしているうちに、店主は僕に心の内を語ってくれました。

「若いころは同級生と居酒屋とかで飲んでも、なにも気にせず割り勘で食事をしていたのに、歳を重ねていくと行くお店も少し変わる。そんなときに『お前は3杯飲んだだろ?俺は2杯しか飲んでないのに割り勘なのかよ』と相手が言うようになったことが悲しかった」

 そんな風に言ってきた友人とはもう食事にいけないなと思ったんだそうです。

「最近は“コスパ”という言葉がよく使われるけれど、食事やお酒はそれだけの世界じゃない。美味しいものには美味しいものなりの価値があって、美味しく生まれてきた食事やお酒に罪はない」

 そこで僕は合点がいきました。

「だからこの店主は入ってくるお客さんに怖い顔をしてしまうようになったんだな」と。

 その話を聞いた翌日にも僕はそのお店を訪ねました。

「今日は大切な友人と食事をするから、美味しいワインを買いに来ました」

 僕はそう言って赤白一本ずつのワインを購入したのです。

 昨日訪ねた僕であることに店主が気づいていたかどうかはさておき、ワインがグラスに注がれたときの花が開くような香りのように、店主の顔に笑顔が咲くことを心から祈っています。

片寄涼太

片寄涼太 Ryota Katayose
GENERATIONS from EXILE TRIBEのボーカル。1994年8月29日生まれ。大阪府八尾市出身。祖父と父が音楽教師で、若いころからピアノに親しむ。2012年にデビュー。14年にドラマ「GTO」で俳優デビュー。19年に映画「午前0時、キスしに来てよ」で橋本環奈とW主演。GENERATIONS、25枚目のシングル「雨のち晴れ」が発売中。

小竹正人 Masato Odake
作詞家。3月10日生まれ。新潟県出身。東京・本郷高校、カリフォルニア州立大学卒業。 作詞曲「Unfair World」で第57回日本レコード大賞受賞。「花火」(三代目J SOUL Brothers from EXILE TRIBE)など、数百曲を手掛けた。小説は『空に住む』『三角のオーロラ』(共に講談社)、歌詞&エッセイ集に『あの日、あの曲、あの人は』(幻冬舎文庫)。2017年から、自身の歌詞をモチーフに、三池崇史、行定勲、河瀬直美、石井裕也らが映像化する「CINEMA FIGHTERS project」のコンセプトプロデューサーを務める。