競泳・岩崎恭子が語る「池江璃花子がメダリストになる可能性」 「泳ぎのセンスを失っていない」

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 オリンピックという名の人生劇場で、これほど運命に翻弄されたヒロインはいなかったに違いない。重い病を患い「東京五輪」出場が絶望視された競泳の池江璃花子(20)。しかし驚異の回復力を見るに、出場はおろかメダルも夢ではない――そんな世評も聞こえてくる。欺界の先達は何を思うか。

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 2019年2月8日、白血病と診断されて入院を余儀なくされた池江は、懸命の治療の甲斐もあって、その年の12月には退院を果たす。そして翌年の3月17日、実に406日ぶりにプールに入ると、わずか3カ月後には練習を本格的に再開させた。

 そして先月下旬、復帰5戦目のレースで初優勝を飾る。本命の100メートルバタフライでも好記録をおさめ、4月から始まる日本選手権の出場資格を確実なものとするまでに、劇的な回復を遂げたのだ。

 スポーツ紙の五輪担当記者が解説するには、

「日本選手権は五輪の代表選考会を兼ねる大事なレースです。復帰後の池江は5レースを泳いで見事な記録を出し、選手権では個人として4種目の競技に出場できる資格を得ています」

 具体的には、50メートルと100メートルのそれぞれ自由形とバタフライ。池江が選手権で「派遣標準記録」を突破して2位以内に入れれば、五輪への切符を手にすることができるというのだ。

“練習がストレス発散”

「復活ぶりが著しいとはいえ、体力的には回復途上ですから、個人種目で上位2人に入るのは相当ハードルが高い。それでも、代表に選ばれる可能性は決してゼロではないと思いますよ」

 そう語るのは、1992年のバルセロナ五輪・女子競泳200メートル平泳ぎで、日本人最年少の14歳で金メダルを獲得した岩崎恭子氏(42)である。

「団体種目の400メートルリレーにおける代表枠は4人ですが、池江選手はそのうちの1名に選ばれてもおかしくありません。リレー代表は、派遣標準記録(54秒42)を突破した上位4名が選ばれる仕組みですが、すでに彼女は100メートル自由形の練習段階で、54秒台を出しています。先月もトレーニングに励む彼女と会いましたが、目が合うとニコっと会釈をしてくれてポジティブさを感じた。期待されている自分の状況を認識していて、周りのプレッシャーが決して重荷となっていない。選手権に出るからには代表をつかみ取る。そんな気迫を感じました」

 技術面についても太鼓判を押す。

「肩の可動域が広いことが池江選手の持ち味のひとつですが、病気を経ても衰えていない。水を巧みに捉える泳ぎのセンスを、まったく失っていないことにも驚きました。そもそも入院で筋力が落ちた上に、彼女からは練習中に気持ちが悪くなったこともあったと聞いています。泳ぐのもやっとのマイナスばかりの状況から、たった1年で五輪を狙えるまで回復した。もはや奇跡としか言いようがありません」

 岩崎氏はこうも言う。

「彼女は“練習がストレス発散になる”とも言っていました。私なんて現役時代にそう思ったことはありませんよ。闘病を経て、彼女は精神的にも本当に強くなったんだと思います。本人は(24年の)パリを目指すと公言していますが、もはや東京大会も狙えるところに立っている。両方への出場を目指して貰いたい。そう思っているんです」

週刊新潮 2021年3月18日号掲載

ワイド特集「変な噂 悪い噂」より

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