山田裕貴が教師役、「SDGsモノ」「若手俳優の青田買い」として見るドラマ「ここは今から倫理です。」

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さすがNHKの「よるドラ」枠

 倫理。勉強した記憶がない…。全員が受ける必修科目ではなく選択科目だったような…。受験科目で倫理を選んだ人に会ったことがないし、単体ではなく政治経済や現代社会と抱き合わせだったような…。実に地味でマイナーな印象。そんな倫理の授業を通して、高校生が抱える問題を丁寧にあぶり出していくのが「ここは今から倫理です。」(NHK、土曜23時30分~)。本日3月13日が最終回である。

 主役の倫理教師・高柳を演じるのは、ここ数年教師役が多い山田裕貴(といってもハイテンション鬼畜系や変態系の教師役が多く、やっとまともな教師役になれてひと安心)。

 山田は生徒に対して驕ることも媚びることもなく、居丈高でもなければ馴れ馴れしくもない。

 誰に対しても敬語を使い、同じ温度(低め)で接し、淡々と倫理を教える。学校モノだが、教師が正義で生徒をねじ伏せる説教臭さはない。

 ほとばしる汗と涙と青春でもなければ、初恋胸キュン脳内花畑の思春期モノでもない。生徒同士が殺し合うような絶望と殺伐の物語でもない。

 じゃ、いったい何なのよ!?

 それこそ、どう感じてどう分類するのかは視聴者にゆだねられている。

 私はこのドラマの「固定観念&既成概念をとっぱらう」作用と「当たり前の平等意識をちりばめたセリフ」に感心したので、「SDGsモノ」と分類している(はやりの言葉なので使いたくてうずうず、SDGs)。

 また、短めの関連番組を同時に制作。漫才師のぺこぱが担当しているあたりも、問題意識の強さとセンスのよさを感じる。さすがNHKの「よるドラ」枠。

中高年に知恵熱出させるほど

 若者向けの作品を精力的に制作しているが、むしろ私のような中高年層が妙に絶賛して支持するという皮肉。10代の若者に刺さっているかどうかはわからないが、若い人に勧めたい、いや若い人と日々接している若くない人たちにも勧めたい、そう思わせるのだ。

 このドラマが描くのは、高校生の日常に存在する不安や違和感。山田の言葉にヒントを得て、生徒自らが気づいて成長する話もあるが、生徒が苦しんでいることを誰にも言えず、SOSを求める切実な話もある。

 逆に、教師である山田が生徒から教わり、真理にたどりつく場面もある。そこがいい。山田自身も常に悩んでいて、答えを探し出そうとしているのだ。

「いじめられっ子を救うのが正義?」「何ひとつ制限のない自由は幸せなのか?」「教師と生徒の恋愛はセクハラ?」「慕っている兄が犯罪に手を染めていたら?」「体に触れたがる人とどう接する?」「クラス全員団結のノリについていけなかったら?」と毎回様々な問いかけがある。

 たたみかけてくる問いは、大人でもたじろぐ。中高年に知恵熱出させるほど、答えるのが難しいし、恥ずかしくもある。好き嫌いが分かれる作品だが、自分がもし親になっていたら思春期の子供と一緒に観たかったドラマだ。48歳だけど、山田の授業を受けたいとも思ってしまった。

 内容もいいが、役者陣もいい。女子にたぶらかされる童貞教師を演じた田村健太郎、保健室から生徒を見守る梅舟惟永、裏社会に通じているジュダを演じた成河の圧倒的存在感たるや! 興味を注ぐ俳優陣がニッチかもしれないが、彼らがドラマの土台を支えているのは間違いない。バイプレイヤーのさりげない名演技は一見の価値あり。

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