巨人の“超大型ルーキー”秋広優人、高校時代から見せていた恐るべき潜在能力

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 セ・リーグ3連覇、9年ぶりの日本一奪還を目指す巨人。エース・菅野智之の残留や、桑田真澄氏のコーチ就任などが大きな話題となっていたが、ここまでのキャンプで一際、存在感を見せているのが、身長2mの超大型ルーキー、秋広優人(二松学舎大付)だ。

 ドラフト5位という下位指名での入団ながら、キャンプ序盤の紅白戦から快音を連発すると、2月12日には一軍にも合流している。そんな秋広の持つ可能性、将来像をアマチュア時代のプレーも参考にしながら探ってみたい。

 筆者が秋広のプレーを現場で初めて見たのは、昨年夏の東東京代替大会、東京成徳大高戦だ。この試合、秋広は背番号3でありながら、4番、ピッチャーで先発出場。1回、2回は走者を許したものの、自らの牽制などで進塁を許さず、最終的に4回を打者12人、4奪三振とほぼ完璧な投球で試合を作って見せた。

 ストレートの最速は142キロをマークしたが、それ以上に目立っていたのが安定したコントロールである。投げ終わった後に一塁側に体が流れるものの、全身を使って楽に腕を振り、しっかりと指にかかったボールをコーナーに集めることができていた。これだけ大型で投球をまとめられるのは非凡なセンスの表れである。

 ピッチング以上に輝きを放っていたのが、バッティングだ。相手投手も当然。秋広を厳しくマークしていた。第1打席ではいきなり死球を受けたものの、第2打席と第4打席ではツーベースを放ち、4番としての役割をしっかり果たした。

 特に見応えがあったのが3回の先頭打者として迎えた第2打席だ。相手左腕は走者がいないにもかかわらず、タイミングを外そうとしてクイックで内角いっぱいの厳しいコースにストレートを投げ込んできたが、見事に肘をたたんで対応し、センター左へ弾き返したのだ。

7秒台の脚力

 この打席を見て、決して体の大きさやパワーだけではなく、技術的にも確かなものを持っているということがよく分かった。走力をみると、二塁到達タイムは8.2秒台であれば十分速いと言われているなか、秋広のタイムは8.12秒をマークしている。一塁までは少し流して走っていたが、ベースを回ってからの加速は素晴らしいものがあり、最初から全力で走っていれば、7秒台を楽に叩き出すだけの脚力も備えている。

 ここまでのキャンプ、紅白戦、練習試合を見ていても、目立つのが体の使い方の上手さだ。190cmを超えるような大型選手の場合、長い手足が諸刃の剣となって上手く使いこなせないことが多いが、秋広はどのコースに対してもスムーズにバットを振り出すことができているのだ。

 高校生の場合、金属バットから木製バットになったことでまず苦労するが、そのような様子も全く見られない。先日の報道では、打球速度が主砲の岡本和真に次ぐ数字を叩き出したとあったが、そんなパワーも高いミート力があるからこそ生きることは間違いないだろう。

 高校時代のプレーでも紹介したように、打つだけではなく、投げる、走るという部分でも非凡なものがあるのは大きな魅力だ。原辰徳監督は、将来的にはサードとして育てたいと発言していたが、身のこなしやスローイングの強さを見てもこなせるようになる可能性は十分にある。岡本のサードがまだまだ続いているうちに抜擢するとなれば、肩の強さを生かして外野に挑戦させても面白いだろう。

 今後の課題となると、やはり体作りということになってくる。球団が発表しているプロフィールによると、体重は95kgとなっているが、身長を考えるとまだまだ細く見える。また、プロで一年間戦う体力もこれから当然必要になってくる。ただ、そんな課題はプロ入りした選手であれば誰でも抱えているもので、それ以上に将来に対する期待感は大きい。近い将来、不動の中軸としてチームを牽引する、文字通り“進撃の巨人”のような存在に成長してくれることを期待したい。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮取材班編集

2021年2月24日掲載

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