失政で消えた「コロナワクチン」6千万人分 河野太郎をワクチン担当相に据えた背景とは

国内 社会 週刊新潮 2021年2月4日号掲載

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 少なくとも日本では新型コロナは騒いでいるほどの脅威ではない。それはお読みいただければわかるが、にもかかわらず、多くの人は恐れている。そこで頼りになるのはワクチンだが、ファイザー社と契約していたはずの6千万人分が、失政の挙句、消えかかっていた。

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 パンデミックの最中、数字は刻々と変わるから、新型コロナウイルスがいかに恐ろしいかと、煽ろうと思えばいくらでも煽る余地がある。しかし、恐れすぎはまた、さらに恐ろしい結果を生み出しかねない。

「備えあれば憂いなし」という。実際、感染者数が減った夏から秋に医療体制を整えていれば、医療崩壊の心配も要らなかっただろう。一方、最悪の事態に「備え」るあまり、人々の行動を停止させれば倒産や失業を生み、心身に別の病気を呼び込みかねない。挙句、自殺や病死が増えれば、「備え」は「憂い」に直結する。

 ことさらに「備え」が必要だと強調しているのがテレビのワイドショーだ。テレビ朝日「羽鳥慎一モーニングショー」では1月25日、コメンテーターで同局の玉川徹氏が「ゼロコロナをめざして徹底的に(感染者数を)下げる」と提案。日本医科大学特任教授の北村義浩氏もイギリス由来の変異種に触れ、「1・7倍くらい強い感染力がありますから、これだけ頑張っているという取り組みをしても、まったく抑えられません」と強調。「ゼロをめざすくらいの強い取り組みを、まず政府が」と玉川氏に同調した。

 感染を防止できさえすれば問題が解決するなら、ゼロをめざすのもいい。だが現実には、経済も社会も止まれば、生活の糧も生きる励みも奪われる人が、どれだけいるかわからない。コロナ禍で仕事が増えている専門家と、身分が保証されているテレビ局の社員ならではの発言、と指摘したらうがちすぎだろうか。

 恐れすぎてしまうのは、ある情報を一方向から眺めただけで、恐いと思い込むからだろう。しかし、危機において欠かせないのは物事を俯瞰する力である。たとえば変異種について、京都大学ウイルス・再生医科学研究所の宮沢孝幸准教授は、このように見る。

「変異種が今後、日本でも広がる可能性も否定はできませんが、日本はもともと1万人当たりの死亡率がイギリスの40分の1、感染率も20分の1程度。仮に変異種の感染力が1・5倍あっても、どれだけ影響があるでしょうか。感染者は少し増えても、感染爆発するとは到底思えません。致死率が3割高いという話もイギリスで出ていますが、そもそも日本の死亡率はイギリスの40分の1程度なので、あまり心配しすぎないほうがいい」

 新型コロナウイルスを買いかぶらないために、こんな例も挙げておこう。「このウイルスは無症状の若者が高齢者にうつすから恐い」といわれるが、それにどう備えればいいのか。

「発症するのは一般的にいえば、体内のウイルス量が閾値(いきち)を超えたとき。他人に感染させるには、ある程度のウイルス量が必要なはずなので、発症直前の無症状者が一番危ないと思います。一方、感染してもずっと無症状の人は多くの場合、ウイルス量が少ないと考えられるので、感染させる可能性は低いはずです」

 と、宮沢准教授。もっとも、発症する人としない人の区別はつかないが、

「自分も他人も感染しているかもしれないと思い、マスクをし、飛沫に気をつけ、手洗いをするしかありません。しかし、そうして感染対策を怠らなければ、感染させることもすることもないと思います」

 煽る報道に惑わされず、地道に感染対策をする。それで十分なのである。

休校で子どもたちが犠牲に

 恐れすぎるとなにが起きるか。1月7日に出された緊急事態宣言は、各報道機関の世論調査によれば、9割前後の人が支持している。そもそも菅義偉総理が決断するに際し、世論に背中を押された面がある。

 だが、昨年の緊急事態宣言や再三の自粛要請は、自殺者の増加という副作用につながった。昨年の自殺者数は前年より750人多い2万919人。リーマンショック後の2009年以来、11年ぶりの増加で、特に女性は885人も増えた。痛ましいことに小中高生の自殺者も、68人増えて440人。同様の統計がある1980年以降で最多となった。

 国際政治学者の三浦瑠麗さんはこう見る。

「女性は非正規雇用が多く、失職しやすい。ハローワークに行ったりする人が少ない傾向もあり、失業者としてカウントされない人が一定数います。ですから、女性の失業率の実体は、表に出ている数字以上に悪化していると予想され、男性と同程度の失業率の上昇が、自殺者増に結びつきやすいのでしょう。加えて、シングルマザーのほうがシングルファーザーの家庭より貧困度が高いこと、産後の女性はうつになりやすいこと、子どもの休校時などに家事や育児の負担が女性にのしかかりやすいことなど、コロナ禍の政策のダメージを、女性のほうが受けやすかった。ところが、人と人との接触を避けるように求められ、社会的支援も得にくい状況が生じていました」

 だが、それだけでは説明できないという。

「私たちの調査でも、女性のほうがコロナ禍を深刻に受け止めやすい、との傾向が表れています。マジメで、ワイドショーの煽り報道を信じやすいのか。健康不安も女性のほうが高い。間違ったリスク認識が広がるほど、女性は深刻に受け止めやすいのだと思います」

 子どもの自殺が増えたことについては、どうか。

「アメリカでロックダウンの解除後に行われた調査で、若者の25%が、直近1カ月に自殺を真剣に考えた、と答えています。子どもの場合、大人より完全なロックダウンになりやすい。大人はリモートワークでも、週に1、2回出勤するのは普通ですが、子どもは休校になると学校にまったく行けません。学校再開後も、部活も音楽祭も禁止されるなど、大人以上に自由を制限され続けています」

 臨床心理士でスクールカウンセラーも務める明星大学の藤井靖准教授も言う。

「休校で学校生活が不安定になったばかりか、行事や友だちとの触れ合いも制限されました。複数の変化の積み重ねは子どものストレスになります。それが死にたい気持ちや自殺に結びついてしまう。また、親の生活が不安定になり、余裕を失ってイライラしていると、その感情は子どもに伝わります。しかも、学校とのかかわりが制限され、反対に、家にいて親とのかかわりは増えたので、家族の様子は二極化していたと思います。家族の時間を楽しんだ家庭がある一方で、もともと虐待傾向が見られた家庭では、その傾向が悪化した。実際、学校再開後、“家にいづらかった”“早く学校が始まってほしかった”と話す子が多かった。親になんでも話せる子ばかりではありません。学校の友だちや先生にしか話せないこともあり、それがコロナ禍で制限されてしまったのです」

 命と健康を守る、といって始まった一斉休校だったが、子どもが新型コロナに強く、重症化しないのはデータからも明らかだ。むしろ子どもが命と健康を奪われる失政というほかない。

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