「今際の国のアリス」が世界的にヒットした理由、「山﨑賢人」の世界的俳優への道

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世界的俳優になりつつある山﨑賢人の好演

 主人公・有栖良平(ありす りょうへい)を演じた山﨑賢人は、秦の始皇帝を支える若き軍人を描いた実写版映画「キングダム」(監督は同じ佐藤信介氏)でもそうだったが、目はクリクリとして大きいけれど、どちらかというと繊細な印象を与える細身の役者だ。

「キングダム」では奴隷、「今際の国のアリス」では家族から鼻つまみのニート。

 決して恵まれた状況にあるとはいえない主人公が、必死の思いで這いつくばって、生き残っていく。そういう様を演じるのが実に上手だ。

「今際の国のアリス」の世界的なヒットで、山﨑賢人は世界のマーケットで存在感を示し始めたことは間違いない。

 また、アリスとともに重要な登場人物となる女子高生・宇佐木柚葉(うさぎ ゆずは)を演じた土屋太鳳の切れの良い演技も見事だし、後半から登場する金子ノブアキや三吉彩花らが与える強い印象も素晴らしい。

 アリスとウサギの二人が手を取り合って、不条理な「トランプ」の国で(なお某前大統領とは関係ありません)、数々の困難に立ち向かって生き残っていく様には、鬱屈としたコロナ禍の日常における「希望」を見いだせる気がする。

 それはささやかな希望かもしれない。でも、希望を感じさせるコンテンツこそ、いま一番人々が見たいものだろう。

 そして、このドラマを見ると、様々な作品へのオマージュと連想が浮かんできて飽きることがない。

 例えば、永遠の古典『不思議の国のアリス』。ルイス・キャロルの原題は“Alice's Adventures in Wonderland”だが、「今際の国のアリス」の英語タイトルは“Alice in in Borderland”になっていることとか(Borderlandってなに?)。

 同じく『不思議の国のアリス』を換骨奪胎したウォシャウスキー姉妹(兄弟ではありません)の映画「マトリックス」(1999年)が、機械に支配されたディストピアにおける人間の脳内バーチャル空間を描いていたこととか。
 
 米国ABCのドラマ「LOST」(2004-2010年)で、無人島に墜落した飛行機の乗客達の体験が実は三途の川のような生死の境(煉獄)の話であったこととか。

 木内一雅原作・渡辺潤作画の漫画『代紋TAKE2』(1990-2004年)で、主人公が死亡時にタイムスリップして輪廻転生かと思ったらゲームの主人公だったこととか(劇中の主人公が「劇中劇」のメタ構造に気づくという設定は小松左京『こちらニッポン…』も同様)。

 奥浩哉氏の漫画『GANTZ』(2000-2013年。ちなみに実写版映画(2011年)の監督も同じ佐藤信介氏)で、バーチャル空間でのゲームの成否が現実での生死とリンクしていたこととか。

今際の国のアリス」で水鶏(クイナ)役の朝比奈彩がラスボス(栁俊太郎)相手に見せたお姉チャンバラ風殺陣がクエンティン・タランティーノ監督の名作「キル・ビルVol.1」(2003年)でのブライド(ユマ・サーマン)対GOGO夕張(栗山千明)の伝説的殺陣に対する美しいオマージュになっていることとか――。

 そうした作品へのオマージュが次々に浮かんで来る。ぜひ、「今際の国のアリス」を見てほしい。

 出来ればシーズン1全8話を通しで見る、「一気見」がおすすめだ(家族で見る場合は視聴年齢に配慮しましょう)。

 次回は、お風呂で動画コンテンツを楽しめる防水タブレットを紹介したい。

北島 純
社会情報大学院大学特任教授(Twitter: @kitajimajun) コロナで大学院の授業が全てオンラインになったので、配信機材の最適解を模索中。ニックネームは「ジュンジュン」(デンマーク語だとユンユン)。

週刊新潮WEB取材班編集

2021年1月26日掲載

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