日本のドラマ界を背負ってきた「長瀬智也」24本目の主演ドラマ「俺の家の話」と「ポスト長瀬」

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キャラクター化の妙

 正義感は強く女性にもモテるが素人童貞というそのキャラクター設定は、中高生男子にも憧れと共感を与え、男性支持も強くなった。

 宮藤官九郎が描く男の主人公には、宮藤本人が思春期に培ったと思われるメンタリティが投影される。

 その後も「木更津キャッツアイ」(2002年・TBS)に主演したV6の岡田准一、ドラマ「うぬぼれ刑事」(2010年・TBS)に出演、映画「土竜の唄 潜入捜査官REIJI」(2014年)に主演した生田斗真など、ジャニーズタレントの男性支持が強まるタイミングの背景には、宮藤官九郎脚本がある。

 さらに、宮藤官九郎脚本作品に限らず、その後、嵐の二宮和也が童貞役を演じた『STAND UP!』(2003年・TBS)など、かっこいいだけではない、時にはそういった役ですらジャニーズが演じるというその後の流れの基盤を作った。

 つまり、“ジャニーズが演じる役が2枚目じゃなくていい”流れを作ったのが脚本宮藤官九郎・主演長瀬智也のタッグだったと言っていいだろう。

 その後、このタッグは2005年の「タイガー&ドラゴン」(TBS)などに続き、この20年間で、今回の「俺の家の話」を含め、連ドラ計3本・スペシャルドラマと映画各2本が作られた名タッグとなっている。

3.キャラクター化(2006年~)

 アラサーに突入した長瀬には年齢や男を感じさせない役も多く回ってくるようになる。

 ヤクザが高校に年齢を偽って入学するという韓国映画のリメイク作が「マイ☆ボス マイ☆ヒーロー」(2006年・日本テレビ)。

 白目をむくなど“顔芸”といってもいい、いい意味でわかりやすい演技は子供にも受け、2006年7月クール1番のヒット作に。

 7年後の2013年には同じ日テレ土曜21時枠の「泣くな、はらちゃん」に主演。

 漫画の世界から出てきたキャラクターが、実際の世界と行き来する話だ。

 主人公は「恋とは?」「片思いってなんですか…?」と周囲の大人に疑問をぶつけていくことで世界の美しさや残極さを知っていく。

悪役もできる

 世界について何も知らない漫画のキャラクターが世界を知っていくという設定だからこそ、純真無垢に見える必要がある役どころ。

「恋」「神様」「働く」と……語られる内容は深淵だが、これもまた、子供でも入りやすい形になることに長瀬が貢献している。

「大人だけじゃなく、子どもに向けてって意識がどこかにあるんですよ。大人な話でも、僕は子どもに見てもらいたいと強く思っていて」と本人も語っている。(*3)

4.悪役もできる…(2013年~)

 ピュアな「はらちゃん」を演じた同じ年、「クロコーチ」(TBS)では悪徳刑事の役でダークヒーローを演じきった。

 一般的なイメージからすれば、ジャニーズアイドルらしからぬ役とも言えるが、本人は「アイドルだからこれはやってはいけないとか、そんな浅さで見ていない」と断言。(*4)

 さらに「そんなことで仕事をジャッジしていたら僕はこの世界にはいない」と続け、いわゆる“アイドルらしからぬ役”もやり続けることで、長く俳優として魅力を発揮し続けることができた、と言えるのかもしれない。

 2016年公開の宮藤官九郎監督・脚本の映画「TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ」では地獄の鬼という、悪のキャラクターを演じた。

 長瀬が演じた鬼は“哀しい赤鬼”で、わかりやすい単面的な“悪役”ではない。悪に至る背景を感じさせるのもすごいところである。

「見た人の記憶に残る確信が持てるな、と思えるドラマじゃないと、自分がやる意味がないと考えています」(*4)との言葉通り、ここで紹介した作品のみならず、長瀬の出演作は、記憶に残るものになってきた。

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