ノブコブ徳井が「EXIT」兼近に「圧倒的な敗北感」を覚えた日 チャラ男が真摯に語った虐待問題

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初対面の舞台で兼近が

 その日初めて会った兼近が、エンディングで「ちょっと聞いてくださいよー、徳井さーん」と声を張った。そんなタイプだとは思っていなかったので少し驚いたが、兼近に近付きマイクを向けようとすると、ズカズカと舞台のセンターまでやってきた。

「この前コンビ二人で占いに行ったんですよ、有名な先生のところ」

 突然、何の脈絡もない胡散臭い話をし始めた。

「そのおばちゃんが、部屋に入るなりバタバタ騒ぎ出して、すごいすごいって言うんですよ、EXITのオーラみたいなのがすごいって」

 勢い良く話す兼近に、こちらはただコクコク頷くだけ。

「それでようやくおばちゃんが落ち着いて占いをし始めたら、とにかく見えると。あなたたちの明るい未来が、って」

 まぁ占い師だし、そんなこともよくある話だろうと思った。だがまさか、そんなただの自慢のようなオチのない話を、ライブのエンディングにわざわざぶち込んでくるわけもなかろうと、僕たちは待った。

「あのー、私テレビとか本とかね、本当に全然見ないからね、お笑いのこととかも全然分からないんだけどね」

 一応自分たちが若手のお笑い芸人で、これからの芸能生活がどうなるかを占って欲しいとは伝えたそうだが、占いのおばちゃんはその辺には詳しくないらしい。

「だから、あたしはよく分からないんだけど、なんかあなた方の近くに、あのー、へ、へいせー? へいさい? のぶしのぶし? こぶしこぶし? あたしはちょっとお笑いとかに、詳しくないんで分からないんだけども、いるんじゃない? そんな感じの人が、なんかよく分からないんだけども」

 おばちゃんは捲し立てる。

「あ、えーと、平成ノブシコブシさん、ですか、ね?」

 ドッキリかとも疑いながら、恐る恐るそりゃもうそれしかいないでしょーよ、ということで僕らの名前を挙げてくれたという。

「そ、それの、そのー、分からない。あたしは分からないんだけども、と、と、きい? ときいさん? なんか、そんな感じの人はいらっしゃらないかしら? いや、あたしはよく分からないんだけどね?」

 続けるおばちゃん。

 もはやギャグじゃーん、と女子高生ばりに僕は心の中でツッコみながら聞いていた。

「徳井さんですか?」

「そ、そうそう! そう、なのかな? あたしにはちょっと分からないけどもね。その、平成なんたらかんたらの徳井さんって人のおかげで、あなたたちは明石家さんまさんの10倍売れるわよ!」

 なんだよ、その摩訶不思議な話。

「嘘つけ!」

 と、僕も吉村もその怪しい占い師の話をいったん終わらせたが、僕の胸中は穏やかではなかった。

「俺のおかげで、さんまさんの10倍売れる? なんだそりゃ。日本でさんまさんの10倍って、こいつらは『Mr.ビーン』でも撮るのか? ローワン・アトキンソンにでもなるってことなのか?」

 そんなわけない、と頭では思いつつも「徳井さんのおかげで売れる」と言われたことで、その日から僕のEXITに対する目線は変わった。

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