女性宮家に代わって浮上した「皇女」案をどう捉えるべきなのか

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「皇女」は身分ではなく一般名称、「王女(おうじょ)」も選択肢に

「皇女」という称号については、一部で「法の下の平等の原則に反するのではないか」という指摘もある。だが、これも誤りだ。

 当時の論点整理に先立つ政府のヒアリングに有識者の一人として加わった日本大学名誉教授の百地章氏は、12月21日付の産経新聞の「正論」上で、「元女性皇族に特別の身分を与えようとするものではない。もし特別の身分を与えれば『華族その他の貴族の制度は、これを認めない』とした憲法14条2項に違反する』」と憲法学者の立場で説いている。

 前述の論点整理は、「内親王」という皇族の身分(身位)を使うことを否定しているのであって、天皇の女のお子さまのことを意味する一般名称の「皇女」を否定しているわけではないのだ。

 もっとわかりやすく言うと、皇室典範第5条は「皇后、太皇太后、皇太后、親王、親王妃、内親王、王、王妃及び女王を皇族とする」と皇族の身分(身位)を順に規定しており、「内親王」や「女王(じょうおう)」という身位を、皇籍を離脱した元女性皇族の称号として使うことはあり得ない。

 天皇のお子さまではない内親王の眞子さまや佳子さまにも「皇女」という称号を使うのかという疑問が残るかもしれない。これについても百地氏は「皇女以外の内親王や女王には例えば『王女』という称号も考えられよう」と同紙で述べている。

 混同される方がいるかも知れないので敢えて補足しておくと、「女王(じょうおう)」は「内親王」と同様に皇室典範に規定された皇族の身分(身位)だが、「王女(おうじょ)」は「皇女」と同様に身位ではなく、皇籍を離脱した方も該当する一般名称である。なお、称号を付与するのは、前述の論点整理によれば、御沙汰により賜る、つまり天皇陛下がお与えになるということになる。

「女性女系天皇と切り離して女性宮家を」と言った野田元首相の“ウソ”

 皇女案について、国民民主党の足立信也参院幹事長が12月初めの記者会見で「女性宮家についても議論するようになっていたはずだ。それと違う形で出てきた」と不快感を示したという。

 国会は平成29(2017)年6月、「天皇の退位等に関する皇室典範特例法」を可決するにあたって「付帯決議」を行った。その内容は以下のとおりである。

〈政府は、安定的な皇位継承を確保するための諸課題、女性宮家の創設等について、皇族方のご年齢からしても先延ばしすることはできない重要な課題であることに鑑み、本法施行後速やかに、皇族方のご事情等を踏まえ、全体として整合性が取れるよう検討を行い、その結果を、速やかに国会に報告すること〉

 付帯決議の趣旨は、「安定的な皇位継承を確保する諸課題」とは別に「女性宮家創設等について」の是非の検討を行うということだが、「皇女案」が出てきたということは、政府が検討の末に女性宮家に否定的な立場に立ったということでもある。足立氏の発言は、「女性宮家創設」が無視されたことへの苛立ちにしか聞こえないが、そうでないのなら、これを叩き台として議論して行けば良いのであって、女性宮家の方が優れていると思うのなら、そう言えば済むことである。

 それよりも、筆者には「女性宮家」そのものの危うさが気になる。論点整理を平成24(2012)年に内閣としてまとめた野田首相は平成30(2018)年11月、自身のホームページ「かわら版」で「女性・女系天皇の問題とは切り離して、皇族数の減少や天皇陛下のご公務の負担軽減といった観点から、女性宮家の検討をすることは十分可能だと思います」と述べている。

 ところが、その前年の平成29(2017)年7月の朝日新聞のインタビューでこう語っている。

〈自民党政権に宿題として託したつもりだったが、安倍内閣で検討が進まなかったのは残念だ。これからの10年間でまず女性宮家、次に女性・女系天皇の問題に決着をつけなければならない〉

 女性宮家を女性・女系天皇につなげようという目論見を少しも隠そうとはしていなかったのだ。

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