新型コロナ、高齢者の致死率が低下 治療法の確立、日本人の自然免疫の向上が原因か

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下降フェーズに入っている

 ところが西村康稔経済再生担当相は、最大確保病床の占有率50%以上等の「ステージ4」になれば、分科会の提言で「緊急事態宣言も視野に入る」と発言。それを避けるために、「この3週間が勝負だ」と、国民に発破をかけた。これに、

「緊急事態宣言を出すというのは、いくつかの意味で間違っています」

 と、京都大学ウイルス・再生医科学研究所の宮沢孝幸准教授は反論する。

「いま発表される感染者数は、実際の感染日が10日~2週間前。すでに2週間前にはピークアウトを迎え、下降フェーズに入っているので、緊急事態宣言を出す必要はありません」

 そして外出制限や時短営業に意味がない理由を、感染状況を示す五つの同心円「目玉焼きモデル」で説明する。その真ん中がゾーン1、外側に向かいゾーン2、3、4、5とされ、ゾーン1はどんちゃん騒ぎをする飲み屋など。続くゾーン2は家庭内感染など、3は一般人エリア、4はかなり防衛している人、5は引きこもりとされる。

「すでに真ん中のゾーン1は燃えてしまって、次のゾーンに入っている段階ですから、放っておけば鎮火する。緊急事態宣言はゾーン3~4の人を5に追いやるだけです。鎮火スピードが速まるなら少しは意味がありますが、下降フェーズに入っている以上、時短営業の経済的デメリットのほうが、はるかに大きい。そもそも普通に居酒屋で飲んだ程度では感染は拡大しない。どんちゃん騒ぎだけをやめれば大丈夫なのです。“この3週間”というのも、まったくのピント外れで、大事な時期は2~5週間前でした。いま対策しても手遅れですが、それでもこの程度ですんだのです」

 また、GoToトラベルについても、

「感染拡大の大きな原因ならわかりますが、そうでない以上、やめるメリットは全然ない。GoToトラベルがよかったのは、ここまでやっても感染は大して広がらないとわかったこと。大丈夫だったことを、政府はきちんと説明しなければなりません」

 と言って、こう続ける。

「大事なのは啓発です。GoToはメリットがあったとはいえ、かなりのお金を使っていて、結局、自分たちに跳ね返ってきます。京都府も財政難になり、今後の予算編成が難しい状態です。赤字幅が広がれば、お金を使うべきところで使えなくなってしまう」

高齢者の致死率は低下

 GoToトラベルでは、地域共通クーポンを不正取得する詐欺も頻発している。それよりも、無闇に怖がる必要はないのだと安心させる啓発こそ、最大の経済対策になるはずである。一方、恐れすぎたために、なにが起きているか。その一例を、おくむらメモリークリニックの奥村歩院長が示す。

「認知症は人との触れ合いがあれば、そんなに大きな問題はなく生活できる病気です。ところが、新型コロナの影響でデイサービスなどの社会資源が使えなくなったり、家族が“介護施設に行くとコロナがうつるのではないか”と心配し、遮断したりするケースが起きています。介護施設が人や社会と接する最後の頼みの綱だった人が、それを使えなくなれば、認知症は進行します。また、グループホームや特別養護老人ホームなどに入っている方は、コロナの影響で家族の面会もお断りになった。入院している方も同様で、こういう人たちが、うつ病になったり、暴れたり、という問題が起きました」

 むろん、どんな状況下でも、新型コロナ禍の弱者である高齢者の命は、守られなければなるまいが、実は、その致死率は低下の一途をたどっているのだ。

 掲載のグラフで一目瞭然だが、PCR検査の陽性者のうち亡くなった人の割合、すなわち死亡率は、6月24日の時点で60代が5・1%、70代が14・9%、80代以上が29・8%だった。それが11月25日には、それぞれ1・7%、5・7%、14・0%にまで低下した。

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