不祥事で消えたタレントのCM違約金はどれくらいか?算出方法と相場を解説

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 今年ほど芸能人とCMの関係が話題になった年はないのではないか。不倫が明るみにでた東出昌大(32)やひき逃げ事故を起こした伊藤健太郎(23)らの違約金問題がクローズアップされたからだ。そもそも契約金はいくらぐらいで、違約金はどう計算されるのか?

 まず、誤解を解いておきたい。昭和期のころから現在に至るまで、芸能人のCMギャラのランキング表があるとされているが、芸能プロダクションのCM担当者は「そんなものはない」と一笑に付す。

「ちょっと考えたら、分かるはず。CMに力を入れているスポンサーは高額のギャラを出す。CMによってギャラはバラバラ。芸能人ごとに一律ではないからランキング表なんて作りようがない」(同・芸能プロCM担当者)

 例えばハズキルーペのCMの場合、ギャラはかなり高く、こんな金額がその芸能人の固定化したギャラだったら、ほかのスポンサーは到底起用できない。

 その金額は渡辺謙(61)が2億円、舘ひろし(70)は8000万円、菊川怜(42)はキャスティングの手数料も含めて7500万円、武井咲(26)は7800万。

 販売元である「ハズキカンパニー」の松村謙三会長兼CEOが、一部週刊誌の取材で明かした金額である。

 ギャラは半年契約、1年契約などと期間によっても違う。雑誌媒体込みという契約もあり、これもギャラは異なってくる。やはりランキング表は作成しようがないのだ。

 また、芸能人側が出たいCMはギャラが安くなる。ちょっと意外だが、化粧品のCMに女優が出る場合もそう。ギャラは割安となる。

「美しく撮ってくれて、女優にとってはPRにもなりますからね。このため、化粧品のCMは少しくらいギャラが安くたって出たい。しかもCMを流すくらいの有力化粧品メーカーはそう多くないし、一度契約したら長期化しやすいので、話が来たら、まず断らない」(同・芸能プロCM担当者)

 逆に出るとイメージダウンになりかねないCMはその分、ギャラが高い。例えば未だ偏見の残る消費者金融である。このため、タモリ(75)が2009年、消費者金融大手であるアコムのCMに登場した時には放送界内でかなり話題になった。

 そもそもタモリがそれほど多くCMを引き受ける人ではないこともあり、「いくら契約金が出たのだろう」「1億円は下らないはず」「タモリさんとアコムの間に太いパイプでもあったのだろうか」と、ささやかれた。契約は2012年まで続いた。

 CMギャラ決定の仕組みはセリに近い。芸能人側が出演を嫌がり、スポンサー側はどうしても出て欲しいと望めば、ギャラは高くなる。ギャラを積まれても芸能人側が首を縦に振らなかったら、破談だ。マルチまがい商法などが疑われるスポンサーだと、あり得る話なのである。

 ギャラが高いか安いかの目安は「年間契約で3000万円程度」(同・芸能プロCM担当者)。第一線で活躍する芸能人の場合、年間契約の相場はこの程度なのだという。この金額を超えると「高い」ということになるそうだ。

“清廉潔癖”に需要増

 一方、どんなに人気があろうが、薬物使用の噂があったり、派手に遊び歩いていたりしたら、CMの依頼は少ない。スポンサーが望もうが、広告代理店が待ったをかける。

 依頼を受けた芸能プロが本人に話を通さずに断ってしまうケースもある。

「本人が問題を起こした時、芸能プロは違約金を立て替えなくてはなりませんからね。その後、本人が返済できないとなると、目も当てられない。下手をすると、会社が潰れます。だからCM契約に長けた大手芸能プロはCMの依頼を手放しでは喜びません。よく吟味する」(広告代理店関係者)

 不祥事を起こした本人は仕事が激減するので、立て替えてもらった違約金を返せない可能性が高いのである。

 その違約金はもらった契約金の2~5倍になるという。幅があるのは損害の程度に差があるからだ。

 例えばスポンサーが既に購入していたスポットCM(番組と番組の間や番組内の特定時間内のCM)が無駄になり、ACジャパンのCMに差し替わるなどしたら、そのスポットCM料金分も払わなくてはならない。

 スポットCMの料金は時間帯などによって違うが、15秒でおおよそ30万から100万円。「安い」と思う人もいるかも知れない。だが、1本単位では買えず、大抵は各局で流す。すると、数十本から数百本単位に。それが全て無駄になったら、莫大な金額になる。

 ポスターの作り直し、貼り直しの料金も請求される。スポンサーが大目に見てくれることは一切ない。企業は利益追求のために存在し、宣伝をしているのだから。その上、本人はスポンサーを裏切ったのである。庇うはずがない。

 広告代理店が肩代わりすることもない。15%の手数料を得ているだけなので、負担する義理はない。

 もしも本人も所属する芸能プロも払えなかったり、払う意思を見せなかったりしたら、訴訟になる公算が大きい。実際、過去にも例がある。

 ギャラのランキングは存在しないものの、CMの契約本数はスポンサーや広告代理店からの信頼の証と言える。

「違約金を回収し、損失がカバーできようが、やはりCM打ち切りは避けたい。新しいCMの撮影も含め、とてつもなく面倒なので。だから、不祥事を起こしそうにない人にお願いが集まりやすい」(同・広告代理店関係者)

 確かに、富士薬品や丸大食品などとも契約し、「現代のCMキング」とも呼べる松岡修造の場合、人柄や品行について悪い評判が立ったことが一度としてない。

「世界のトヨタ」やキンチョール(大日本除虫菊)、雪印メグミルクなどと契約する香川照之(54)もスキャンダルとは一切無縁だ。

 日産、日本マクドナルド、GYAO!などと契約するキムタクこと木村拓哉(48)もそうである。

「今年は不祥事が続いたので、清廉潔癖な芸能人のCM人気はますます高まる」(前出・芸能プロCM担当者)

 なにしろ、芸能プロ関係者の間では「CM違約金保険を作って欲しい」という冗談が飛び交っているくらいなのである。

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。1990年、スポーツニッポン新聞社入社。芸能面などを取材・執筆(放送担当)。2010年退社。週刊誌契約記者を経て、2016年、毎日新聞出版社入社。「サンデー毎日」記者、編集次長を歴任し、2019年4月に退社し独立。

週刊新潮WEB取材班編集

2020年12月8日掲載

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