コンビニ「700円くじ」が減って「1個買うと1個無料」が増えたワケ

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デメリットは「メーカー負担」大、メリットは

 実は「1個買うと1個無料」しかり「700円くじ」しかり、景品の費用は、参加するメーカー側が協賛の形をとり負担している。メーカーにしてみれば、多少の負担はあっても、コンビニの棚に自社製品が置いてもらえるという、うま味がある。ただし、

「たとえば700円くじで、総店舗数1万店のコンビニチェーンに、1店舗あたり130円のドリンクが3つ当たるよう設定するとしましょう。この場合、総店舗数(1万店)×商品価格(130円)×引換券の数(3枚)=390万円が、メーカーの協賛額になります。ところが『1個買うと1個無料』の場合は、くじのように『当たり』の数が決まっているわけではない。1個無料としていくつ提供することになるか、協賛額がはっきりとは事前に読めないわけです。場合によってはメーカー側の負担が大きくなりかねず、『1個無料』に参加できるのは、体力のある大手メーカーだけになります」(渡辺氏)

 たしかに冒頭で紹介した例を思い出せば、景品となっているのは超有名メーカーの商品ばかりだ。では「1個買うと1個無料」は、どんな点がメリットなのだろうか。

「景品がランダムな700円くじと違い、自社製品を買ってもらえれば、自社の他の製品がお客様にプレゼントされる、というのはメーカーのメリットです。例えばカルピスを買うと別のカルピスを試してもらえるわけで、つまり自社製品の間での『ブランドスイッチ』が可能になり、ファンになってもらえます。われわれ消費者としても、カルピスが好きだからカルピスを買い、さらに別種類のカルピスがもらえるわけですから、嬉しい。よく分からない商品が当たってしまうくじと異なり、魅力的に感じる商品がもらえることになる場合が多いわけです」(渡辺氏)

「1個買うと1個無料」のキャンペーンは、お隣の韓国で以前から頻繁に行われていたとか。ただ韓国では「その場」でもう1個がもらえることが多いのに対し、日本のコンビニの施策は、もう1個の引換期間が“後日”に設定されている。

「後日にすることで、来店機会を増やすことができるわけです。その点で日本のキャンペーンは韓国のそれより進化しているといえるかもしれません。いずれにせよ『1個買うと1個無料』は『700円くじ』に比べ、商品のファンを狙った施策の意味合いも強い。今後主流になるであろう『ワントゥワンマーケティング(顧客の嗜好や属性に基づくマーケティング)』の手法を感じさせます」(渡辺氏)

週刊新潮WEB取材班

2020年11月18日掲載

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