コロナを5類感染症に引き下げるべきか 専門家の意見は

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全数把握の必要性

 指定感染症の期限を1年延長した場合、先の和田氏によれば、

「その期限が切れる時には新型コロナをどこかに分類しなければなりません。5類になるのか、新型インフルエンザ等感染症として分類するのか、あるいは新型コロナ用に新たな類型を作るのか。さまざまなシナリオが考えられます」

 5類には全数把握疾患と定点把握疾患があり、

「例えば、麻疹(はしか)は全数把握です。麻疹は感染力が強く、大人が感染すると重症化する病気ですが、有効なワクチンがあるので5類に分類されています。全数把握疾患については、診断された場合は全て届け出るように定められています」

 と、和田氏。

「一方、定点把握疾患は、定点医療機関において診断された場合に報告され、その数字をもとに統計的に患者数が推計されます。例えば、季節性インフルエンザは定点把握です」

 目下、コロナ感染者については全数が把握されて公表され、それが毎日報道されているわけだが、

「いつまで全数把握をやるのか、やれるのかという点については真剣に考えないといけません」

 和田氏はそう指摘する。

「例えば東京で今後1週間、感染者が毎日500人を超えるようなことになったら、感染者を正確に数えることができるでしょうか。感染者数をどうカウントするのが対策に有効なのかを考えるべき時期だと思います。例えば、20代、30代は定点把握にして、60代以上は全数把握にするといったやり方も考えられます」

 先の唐木氏もこう言う。

「新型コロナの重症者数に着目するのは医療崩壊を防ぐ意味がありますが、陽性者数は意味がないと思います。判明している陽性者の裏には、検査を受けていない無症状者が多数いることが分かっています。この点についても、2類相当のままなので陽性者の数が分かった時点で行政も発表せざるを得なくなって、それを受けてメディアも報道する。5類にして季節性インフルエンザと同じ定点把握にすればメディアも報道しなくなるでしょう」

 確かに、未だに東京都の1日の感染者数速報をアラート音付きのテロップで流すテレビ局もある。日々、感染者数が報道されることには慣れたが、これから冬を迎えるにあたり、インフルエンザとの同時流行が怖い。そう考えている方は多いはずだ。

「インフルエンザと新型コロナは感染力や重症度がたいして変わりません。にもかかわらず新型コロナは2類相当だから、患者が出たらすぐに濃厚接触者を全員探して隔離しなければならない。一方でインフルは通院でタミフルなどの薬を出すだけ。この対応の違いが、医療関係者に大きな負担をかけることになります」

 唐木氏はそう語る。

「インフルよりコロナの方が無症状や軽症の人が圧倒的に多いわけですから、コロナの対応を少数の重症者に集中すれば同時流行が起こっても恐ろしくない。ですから、本来は今すぐにでも5類相当に変えなければならない」

 先の森田氏も同意見で、

「高齢者や持病がある人は入院で残りは自宅療養という今の方針は、これまでのインフルエンザと大して変わりません。そういう点でも、コロナは5類相当の方がふさわしい」

 さらに、今後について次のように語る。

「これから冬になるとコロナの感染者数も死者数も増加するでしょうが、冷静に判断しなければなりません。毎年インフルエンザで1万人、肺炎で約10万人が亡くなるわけですから、それと比較していけばいいのです。また例年の全死亡者数との比較も分析すれば、冬に死亡者数が増加してもそこまで慌てることはない」

 ドストエフスキーは冒頭で触れた名言に続けてこう言っている。

「私はこれが人間の最も適切な定義だと思う」

 多くの人が現状に「慣れ」始めているのにアラート音は高いまま。これでは過剰に怖がる人も依然残ってしまう。いつになったらその乖離は修正されるのだろうか。

週刊新潮 2020年11月12日号掲載

特集「『諸悪の根源』放置の舞台裏 何故いつまでたったも『コロナを5類に』できないのか」より

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