「2日に1食」「トイレは近くの公園で」 コロナ禍でシングルマザー、女子高生の命が危ない

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女子高生のリスク増

 そして、コロナ禍によって追い詰められるシングルマザーと同じく、自殺のリスク増が取り沙汰されているのは“女子高生”だ。

 この8月の自殺者数を巡って、厚生労働大臣指定法人「いのちを支える自殺対策推進センター」は次のような分析を発表した。それは〈本年8月に、女子高生の自殺者数が増加している〉というもの。しかも、〈若手有名俳優の自殺報道〉が大きく影響している可能性が高いと指摘したのだ。言うまでもなく、〈若手有名俳優〉とは、7月18日に自ら命を絶った三浦春馬さんのことを指す。

 三浦さんの死後、芦名星さんや藤木孝さん、竹内結子さんといった俳優が自ら死を選び、芸能界では“自死の連鎖”が問題視されてきたが、女子高生たちもその連鎖に連なっていたのだ。

 実際、8月の女子高生の自殺者数は22人にのぼる。昨年、一昨年の同月は共に3人だったため、実に“7倍増”になる。

川淵三郎氏「社会全体が活動を再開するべき」

 精神科医の和田秀樹氏はこう指摘する。

「休校やオンライン授業といった環境の変化によって、多くの学生たちが過度なストレスに晒されてきました。ただ、女子高生の自殺者数が増えたことを考えると、“ウェルテル効果”に着目すべきです。これは有名人の自殺報道に影響されて、一般人の自殺者が増加する現象です。有名な事例としては歌手の岡田有希子が非業の死を遂げ、中野区の中学生がいじめを苦に命を絶った86年に中高生の自殺者が増えました。三浦春馬さんの場合はファンの多かった思春期の女子高生に影響を与えたのでしょう」

 他方、感染症に詳しい浜松医療センター院長補佐の矢野邦夫医師は、

「社会・経済活動を止めることで企業が潰れ、自殺者が増えることは予想していましたが、若者が精神的なダメージを受けて死を選ぶようになるとは思わなかった。中高生は新型コロナに感染しても大半が無症状か、鼻かぜ程度で済みます。彼らにとって死に至るほどの脅威ではないのに、家に閉じこもって精神的に追い詰められ、自殺が増えてしまっては本末転倒です」

 日本の新型コロナによる死亡者数は現在までに1786人(11月4日時点)。8月の自殺者数だけで優にこの数字を上回っている。

「コロナに感染して亡くなる人よりも経済的・精神的なダメージで自殺に追い込まれる人の方が多いわけです。コロナに過剰に戦々恐々とするのではなく、積極的に社会活動の幅を広げることが重要だと思います」

 そう喝破するのは、元Jリーグ・チェアマンの川淵三郎氏である。

「Jリーグやプロ野球では無観客試合からスタートして、いまは収容人数の50%までの観客動員を認めています。観客には検温や手洗い、マスクの着用をお願いするなど、試行錯誤しながら進めている。仮にクラスターが発生しても、すべてを中止するのではなく個別に対処していけばいい。スポーツ界と同様に、社会全体が積極的に活動を再開させるべきです。コロナの時代に大事なのは、生きていく上での覚悟に他なりません。僕自身は感染対策を講じながらコロナに罹って命を失ったとしても、覚悟した結果であれば仕方がないと考えています」

 このまま社会全体が活性化しなければ、シングルマザーをはじめ生活に窮乏する女性や若者たちはより一層、窮地に追い込まれ、最悪の決断を下しかねない。

週刊新潮 2020年11月5日号掲載

特集「後を絶たないコロナ自殺者 『美智子さま』が御心を痛める『いのちの電話』問題」より

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