妻夫木、吉高、おディン様らが血で血を洗う相続争い 「危険なビーナス」

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もう二度と共演が叶わないと思うと…

 豪華キャストを揃えた日曜21時からのTBS「危険なビーナス」。この後の展開が全く予測不能だが、主要キャストの魅力について吉田潮氏が綴る。

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 大金持ちのお家騒動って楽しいよね。完全に他人事だから。共感も同感もほぼなくて、あるのはドロドロとした感情の交錯、殺伐とした人間関係、剥き出しの本性。基本、なんでも金で解決できる人々の、血で血を洗う相続争いは、私ら庶民にとっては極上のエンタメとなるわけで。それが「危険なビーナス」(TBS、日曜21時~)。

「あるある!」「わかるぅ~!」がひとつもないのに、惹きつけてやまない。

 縁遠くなっていた親戚の遺産相続争いにうっかり巻き込まれる主人公・手島伯朗を演じるのは、連ドラが久しぶりの妻夫木聡。

 どこにでもいそうな容貌だが、よくよく見ると眉目秀麗、底抜けの明るさで人懐っこい笑顔を見せたかと思えば、救いようのない精神的な深爪を負う難役もこなす。ブッキー、久々!

 ここ数年、ブッキーが出演して記憶にある連ドラといえば……。

 平成の大家族を描こうとしたものの、昭和を引きずり過ぎてピンとこなかった「若者たち2014」(2014・フジ)。暑苦しく家族愛を強要する長男役だった。激しい兄弟喧嘩のシーンは時代に合わず、ゆとりもさとりも、ましてや年寄りも反応せず。

 もうひとつは「イノセント・デイズ」(2018・WOWOW)だ。死刑囚となった幼馴染の女性・田中幸乃(竹内結子)が無実であると信じて奔走する主人公・佐々木慎一役。

 関係者に話を聞くと、彼女の凄絶な過去や予想外の真実が見えてくる。

「人は勝手に都合のよい側面だけを見る」ことを思い知らされるという物語だ。実は、竹内結子、芦名星、そして新井浩文も出演していた。もう二度と共演が叶わないと思うと、稀少な作品でもある。

謎の女性・楓(吉高由里子)が現れてから、生活は一変

 連ドラは4年に一度……五輪かよ! と思いつつも、そんなにブッキー不足に陥らなかったのは、いい映画にたくさん出ていたから。「渇き。」(2014)、「怒り」(2016)、「愚行録」(2017)が特によかったし、「ミュージアム」(2016)はまさかの怪演に心底驚いた(まさかブッキーとは思わなんだ!)。

 連ドラではなく、スペシャルドラマ「乱反射」(2018)もめちゃくちゃ面白かった。

 ブッキーは悲しみと喪失感と憤り、そして悟りへと感情の変化を魅せる主人公を熱演。「妻夫木聡、ここにあり」という作品でもあった。連ドラで姿を見なくても、定期的に見せてくれるブッキー節に満足しちゃっていたのだ。

 考えてみれば、妻夫木は小説原作がよく似合う。特に貫井徳郎や吉田修一の世界観にしっくりくると感じているのは私だけだろうか。

 おいおい、ビーナスはどこ行った? 本線に戻ります。東野圭吾原作「危険なビーナス」である。

 始まりは、のほほんとしたブッキーの語りから始まる。

 獣医であるブッキーは「僕調べ」の恋愛市場情報を披露。都心部で一人暮らし、ペットを飼う女性は余裕のある生活をしているので、そういう女性と出会うには獣医が最適だとかなんとか。

 TBS火曜枠の恋愛ドラマのような始まりだが、謎の女性・楓(吉高由里子)が現れてから、生活は一変。

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