「チコちゃんに叱られる!」が偽情報を紹介 以前にも「肉じゃが」の発祥で誤りが

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 NHKの人気教養番組「チコちゃんに叱られる!」。チコちゃんは、素朴な疑問に答えられない大人を「ボーっと生きてんじゃねーよ!」と叱ってきた。だがそろそろ、彼女が叱られる頃合いかもしれません。

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 9月11日の放送。チコちゃんはゲストの豊川悦司に、「ギョーザ」を漢字で書く問題を出した。「食」へんに「交」と書いたトヨエツにチコちゃんはダメ出し。「餃」が正解で、食へんの下は「二」のように横線にしなければいけないという。58歳の大物俳優は、5歳の女の子からおきまりのセリフで叱られた。

 ところがこの放送後、毎日新聞校閲部のブログが、どちらの表記も正解とチコちゃんに反論。単に手書きと印刷用の字の違いという。ネットでは読売新聞でもトヨエツと同じ字形が使われていると指摘され、9月末の紙面が紹介されている。

 チコちゃんで不正確な情報が放送されるのは、なにもこの回に限ったことではない。たとえば8月21日放送の肉じゃが発祥に関するテーマ。番組では、「東郷平八郎が英国留学中に食べたビーフシチューの味が忘れられず、それを日本にある材料で再現させたところ生まれた」と専門家が解説した。だがこれは、京都府舞鶴市の町おこしのため作られたストーリー。偽情報である。実際、「肉じゃが発祥の地」の仕掛け人も、1999年、毎日新聞のインタビューにこう答えていた。

〈海上自衛隊幹部から“肉じゃがのルーツは旧海軍”と聞いたのがきっかけ。これは使えるなと、東郷平八郎が登場するストーリーを創作したわけです〉

公共放送として

 たしかに番組は〈諸説あります〉と注意書きを出してはいる。が、明確に創作と示されている説を取り上げるのはいかがか。ちなみに肉じゃがの回では、68歳の笑福亭鶴瓶が叱られた。

 番組の説にSNSでたびたびツッコミを入れている「近代食文化研究会」の話。

「肉じゃがの件では、高森直史さんという海軍料理研究家が解説していました。元海上自衛官の高森さんは、舞鶴の仕掛け人から“東郷さんを使う”と事前に相談され、東郷平八郎のくだりが創作だと知っていた」

 その高森氏に聞くと、

「バラエティ番組だからあまり堅苦しくてもいけないと思い、“こういうことがあってもおかしくないよね”というニュアンスでした。よく見ていただければ分かると思うのですが、私は言葉を選んで使い、“東郷説”を肯定も否定もしていません」

 ふたたび、近代食文化研究会の弁。

「番組では、専門家が自ら嘘を話したか、NHKが嘘の話をさせたということになるわけです。雑学ネタに間違いはつきものでしょうが、NHKがこれではいけないと思います。同種の“偽情報”は、シューマイやカレーライス、コロッケに関する解説でもありました。公共放送として視聴者から受信料をとっている以上、もっと時間をかけて調べ、準備すべきだと思います」

 確かに人気番組だし、影響力は大きい。これだけの指摘を受ければ、チコちゃんもNHK上層部あたりから叱られるのでは!? NHK広報局は、

「さまざまな疑問について、専門家の監修のもと、取材過程も交えながら、数ある説のうちの一つとしてお答えしています」

週刊新潮 2020年10月22日号掲載

ワイド特集「人の口に戸は立てられぬ」より

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