池袋暴走「飯塚幸三被告」は庶民感情を逆撫で 前橋暴走「川端被告」を参考にしたら?

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対照的な2人の被告

 10月8日、旧通産省工業技術院の元院長・飯塚幸三被告(89)は東京地裁の初公判で無罪を主張し、メディアが大きく報じたのはご存知の通りだ。交通事故に詳しい加茂隆康弁護士は「一般庶民の処罰感情を逆撫でしたどころか、被告が真摯に反省しているのか、裁判所が疑ってもおかしくない態度だと思います」と指摘する。

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 改めて事故を振り返っておく。2019年4月、東京都豊島区東池袋の都道で、飯塚被告は運転していた乗用車を暴走させ、通行人を次々にはねた。この事故で31歳の母親と3歳の娘が死亡し、通行人9人が重軽傷を負った。

 飯塚被告も重傷だったこともあり、警視庁は任意で捜査。書類送検の結果、東京地検が今年2月、被告を自動車運転死傷行為処罰法違反(過失運転致死傷)で在宅起訴した。逮捕や勾留を免れたことなどから“上級国民”というネットスラングが飯塚被告に使われたのも記憶に新しい。

 フジテレビのニュースサイト「FNNプライムオンライン」は19年5月20日、「“上級国民”だからあえて逮捕することも 高齢者逮捕・勾留の現実」の記事を配信した。

 記事では現行犯逮捕や裁判員裁判の対象となる重大事件を除き、《今の検察当局は、80代以上の容疑者について原則勾留を認めない》と解説した。とはいえ、飯塚被告に対する捜査機関の対応は甘すぎると、世論が強く反発したのは事実だ。

 こうした経緯を経て、東京地裁で初公判が開かれた。自動車運転処罰法違反に問われた飯塚被告は「心からおわびします」と謝罪し、妻と娘を失った夫に頭を下げた。

遺族は謝罪に反発

 だが罪状認否では「アクセルペダルを踏み続けたことはないと記憶している。車に何らかの異常が生じ、暴走した」と過失を全面的に否定したのだった。

 検察側の主張によると、半年に1回の点検を受けており、事故直前(2019年3月)の点検でも不具合は発見されていなかった。事故当日もアクセルペダルの異常を示す故障記録は残っていないという。

 飯塚被告の無罪主張に夫は反発。記者会見で無念の想いを明かし、共同通信のニュースサイト「47NEWS」は10月8日、記事「池袋暴走、遺族が会見で『残念』 被告の無罪主張に悔しさにじませ」を配信した。

《「私たち遺族の無念や2人の死と向き合っているとは思えず、ただただ残念だ」と悔しさをにじませた》

《法廷で飯塚被告が謝罪した際、視線が合わなかったと明かし「私を見ているわけではなく、誰に向けて謝っているのだろうと感じた」と話した》

 前出の加茂弁護士は「率直に言って、“老人の頑固さ”、科学的な物証があっても自説を曲げない頑なな態度が、浮彫りになった初公判でした」と指摘する。

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