アニメ「ポケットモンスター」がゴールデン枠に再挑戦 背景に緻密なファン拡大戦略

エンタメ 2020年10月9日掲載

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 テレビアニメ『ポケットモンスター』(テレビ東京系)の放送時間が変わることをご存知だろうか。これまで日曜日18時から放送されていたが、10月9日より金曜日18時55分からのスタートになる。これはアニメの世界では、ちょっとした“事件”である。19~23時は、テレビ業界ではゴールデンタイムと呼ばれ、最も視聴率が取れる時間帯。18年に一度日曜枠へ移動したポケモンが、テレビ局各社が最も力を入れる枠へ再挑戦することになるからだ。

「日本が世界に誇る」と形容されることも多いアニメだが、実は最近のテレビ放送では旗色が悪い。地上波キー局全日帯では、過去20年近くアニメ放送枠の縮小が進んでいる。少子化が進む中、子供をターゲットにした番組では、視聴率が取り難いためだ。

 2019年10月には、テレビ朝日で放送されている『ドラえもん』、『クレヨンしんちゃん』がゴールデンタイム枠を明け渡した。今回の『ポケモン』の移動は、30分枠アニメが、1年ぶりにゴールデンに登場することになる。テレビ東京や製作委員会各社が『ポケモン』に相当勝負をかけていると見ていい。

『ドラえもん』や『クレヨンしんちゃん』でさえ残れないゴールデンタイムで、『ポケモン』に勝算があるのだろうか。なぜ今、移動するのか。それはポケモンの戦略の変化に大きな理由がある。

タイトル、キャラクターにも変化

 1997年から放送されているアニメ『ポケモン』だが、実は19年秋からタイトルも変わっていた。02年以降、シリーズには、「アドバンスジェネレーション」「ダイヤモンド&パール」「ベストウィッシュ」「XY」「サン&ムーン」といった、原作ゲームに基づいたサブタイトルがつけられていた。しかし今シリーズは、シンプルに『ポケットモンスター』だけになっている。なぜか。これまでのアニメは、時々の新作ゲームに合せた内容にしていた。アニメにはゲームの認知度を上げる宣伝の役割が求められていた。それがなくなったということは、今シリーズの目的は、ゲームのプロモーションでなくポケモンというキャラクターそのものの認知度を広げることにある。

 もうひとつ大きな変更がある。番組を見ると、褐色の肌の「ゴウ」という快活な少年が活躍しているのに気づくだろう。彼はゲームには登場しないキャラクターだ。つまり今シリーズは、長年お馴染みの主人公・サトシだけでなく、ゴウも加えたダブル主人公としたのだ。これまでも、サトシのジーンズをハーフパンツに変えるといった、キャラクターデザインのマイナーチェンジはあった。が、今回のリニューアルシリーズはアニメオリジナルキャラクターを前面に出した大胆なものだ。ゲームをやらなくても、これまでのシリーズを知らなくても楽しむ工夫がなされている。

 すでに充分な人気があるポケモンだが、それが今後も続くとは限らない。長く続くキャラクターにするには、新世代の子供たちを取り込まなければいけない。旧い作品と思われてはいけない。そのための新タイトル、新主人公。ポケモンブランドの刷新というわけだ。

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