農地流失からの復活 絶品スイートコーン畑――かがやいてる、元気な農家

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 毎年のように苛酷な自然災害に見舞われる日本列島。昨年10月12日~13日、関東地方を通過した台風19号では、広い範囲で記録的な大雨を記録しています。このうち、長野県の千曲川は堤防が決壊。その流域に位置するJA信州うえだ管内の農業にも大きな被害が生じました。

 その上田市の中心街から、北東へ車で進むこと30分。真田地区の渋沢集落に着くと、青々とした外皮、ふさふさとした茶色のひげのスイートコーン(とうもろこし)の行列が視界いっぱいに見えてきました。標高1150メートル。大久保昌則さん(40)と弟の秀則さん(37)の2人が丹精を込めて育てた畑です。

 品種は「プレミアム味来85」。大久保さんの畑では、約150種もの品種のスイートコーンを試食した結果、白羽の矢を立てた「味来」という品種を栽培されてきましたが、こちらはその進化系。実際、生で食べてみると、まるでフルーツのようなみずみずしい甘さが口に広がっていくのに、ただただ驚くばかり。スイートコーンが大好物な私だけに、この味はやみつきになりそうです。

 代々、この地で農業を営んできた大久保家ですが、昌則さんが就農したのは、今から14年前。結婚する前年のことでした。すでにその2年前、先に弟の秀則さんが就農しており、以来、2人で力を合わせ、スイートコーン、キャベツ、白菜など25種にも及ぶ野菜を栽培されています。

 それらの野菜は、季節を限定し、自宅の前で開く直売所「みどりの大地」で販売されます。市内はもちろん、市外や県外からも、新鮮な朝採り野菜を求めるお客さんが多数訪れるといいます。時に自ら店頭に立つという昌則さんは、「食べる人1人1人の顔を見て作りたい」と熱い思いを語ります。

 実は、昨年まで、大久保さん兄弟は、全く別の場所で、スイートコーンを栽培していました。しかし、その畑は、その横を流れる千曲川支流の高屋川の氾濫により、一夜にして土壌が流失し、耕作を諦めざるを得ない状況に追い込まれたのです。

 しかし、JA青年部の仲間や、「みどりの大地」のお客さんが応援する声に奮い立った大久保さん兄弟は、先輩から土地を借り、再開を決意します。そして、わずか20日間で木々を伐り拓き、開墾。ご覧のように見事な畑を作りあげたのです。農地流失からの復活。昨年まで2・5ヘクタールに約10万本だったスイートコーン栽培は、今年は、4ヘクタール、約18万本と逆に増えたというから、そのエネルギーに頭が下がります。

 昌則さんは、JA信州うえだ青年部の部長という顔も併せ持っています。地域の活動に勤しむ中、5年前に立ちあげたのが、「かいぶつのたねプロジェクト」(現・かいぶつプロジェクト)です。元Jリーガーの三橋亮太さんと組んで生まれた、農とスポーツのコラボ活動で、地域の親子への食農教育イベントを開催。注目すべきはアスリートのセカンドキャリアとしての就農支援で、すでに2人の元プロスポーツ選手が野菜農家の道を歩み始めています。

 ちなみに、昨年2月、第65回JA全国青年大会「JA青年組織活動実績発表」に参加したJA信州うえだ青年部は、最優秀賞に当たる「千石興太郎記念賞」を受賞。芽を出した「かいぶつのたね」が今後、どのように育っていくのか、私も見守っていきます。

「農業は自然が相手。台風にやられても、熊や猪に作物を食べられても、それは備えきれなかった自分たちが悪い」とどこまでも前向きな昌則さん。「どの野菜も一番おいしい旬の時期がある。それを消費者の人たちに知ってもらいたい」という言葉もしっかり胸に留めたいと思いました。

 JA信州うえだは、1994(平成6)年11月、上田市、東御市の旧東部町地域、小県郡(長和町・青木村)の7JAが合併し、誕生した。北は菅平、南は美ヶ原の高原に囲まれ、中央は千曲川流域の豊かな大地が広がっている。管内の農地の特徴は400メートルから1400メートルまで1000メートルの標高差があることだろう。

 高地ではレタス、キャベツの高原野菜やキノコ、低地では米、麦やアスパラガス、ブロッコリーなどの野菜、このほか、果樹、畜産と多彩な農業も展開。また標高差を活かし、低地から高地へのリレー栽培で作期を伸ばす工夫もなされている。

 豊かな水、肥沃な土地。しかし、管内は数々の苛酷な自然災害に見舞われてきた。JA信州うえだの眞島実代表理事組合長が、「2014年の豪雪、りんご農家を直撃した17年の降雹……」と数えあげる。そして昨年10月の台風19号被害。「河川の氾濫で多くの農地で土壌が流出。ビニールハウスが強風で倒壊する被害も続出した。武石地区は橋の崩落で車が通行止めとなり、JA職員も出動して集荷や集乳作業を手伝った」

 JA信州うえだは、共済の速やかな査定と支払い、国の補助事業の案内など、被災農家に対するさまざまな支援を実践してきたが、2月以降は、新型コロナ感染拡大の影響が表面化する。現在は、被害の大きい品目を中心に、地元厚生連病院をはじめとするJAグループや行政の協力も得て消費拡大への努力が図られている。

 JA信州うえだが力を入れているのが、新規就農への支援。「就農希望者は、信州うえだファームという子会社で研修を受け、同ファームが斡旋する農地で就農してもらう仕組みが定着しつつある。青年部の大久保昌則さんらが展開する“かいぶつプロジェクト”のアスリートの新規就農活動とも連携し、盛り上げていく」と眞島組合長。着実な努力が復興への道を切り開いてゆく。

村上佳菜子の目
スイートコーン(とうもろこし)は、食物繊維が豊富で、いろいろなビタミンも入っていて、とてもヘルシーなので、大好きな野菜。しかし、大久保昌則さんの畑で採れたスイートコーンは、とても甘くてみずみずしいのに驚きました。以前、熊が一晩で大久保さんの畑のスイートコーンを700本平らげたそうですが、熊の気持ちも分かります(笑)。台風で農地の土壌が流されたのに、すぐに別の土地で栽培を再開した大久保さん兄弟の前向きな姿勢には、頭が下がります。アスリートと連携し、新規就農に繋げるというアイデアも素晴らしい。これからもずっと応援していきます。

[提供]JAグループ [企画制作]新潮社 [撮影]荒井孝治 [ヘア&メイクアップ]岩澤あや [スタイリング]柳翔吾