阿佐ヶ谷姉妹はなぜ愛される? 「ネタ」より「関係性」に萌える時代

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 阿佐ヶ谷姉妹を見るたび、食レポでよく使われる「上品な味」というワードを思い出す。あと「やさしい味」。イメージとしては和食。たとえ薄味で物足りない時でも、そう言っておけば丸くおさまるよね。そんな打算が時に見え隠れする、使い勝手の良い表現でもある。

 阿佐ヶ谷姉妹の芸風やキャラも、濃いか薄いかといえば薄い。歌は必ずあるけれど、これといって代表的な持ちネタがあるわけではない。奇抜な出で立ちだとか、切れ味鋭いコメントを残すわけでもない。けれども、いやだからこそと言うべきか、今や二人は「上品」「癒やされる」と大人気だ。

 顔が似ているから、という理由で2007年に結成された姉・渡辺江里子と妹・木村美穂のコンビ。阿佐ヶ谷のアパートで同居生活をしながら、「細かすぎて伝わらないモノマネ選手権」での優勝や、2018年「女芸人No.1決定戦 THE W」での優勝など、実績を積み重ねてきた。売れた今でも変わらず阿佐ヶ谷のアパートで、隣どうしの部屋に住んでいる。そんな二人の日常を切り取った「モーニングルーティン」の動画は、昨年400万回再生を超えた。朝日に顔をしかめ、水を飲んでむせる江里子さん。隣の壁を叩いて相方を起こし、寝ながら歯磨きをする美穂さん。アラフィフ独身女性二人の、ゆるゆるとした生活感あふれる動画は全編通して穏やかだ。老若男女問わず、いつまでも見ていられると好評だったようである。

 彼女たちの魅力は、ロケ企画でも発揮される。丁寧な言葉遣い、和やかなやりとり、礼儀正しいコメント。従来の女芸人に求められていた、ガヤガヤした盛り上げとは無縁である。大げさなリアクションや自虐ネタ、美人タレントとの小競り合い、イケメン店員に鼻の下を伸ばす小芝居。そういう「お約束」がない。だから瞬間的な大爆笑は起きない代わり、ずっと微笑んで見ていられる。面白さより、人の良さが印象として残るコンビ。でもそれこそが、今のお笑い界の勝ち組を表すキーワードなのではないだろうか。

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