不況だとヒュンダイのトラックが売れる理由…韓国サラリーマン40代で肩叩きの悲劇

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90年代通貨危機が残した大きなツメあと

 韓国では40代後半で、「名誉退職」の美名のもと企業から自発的な退職を強要されるケースが少なくない。このような早期退職は90年代後半の通貨危機で急速に広まり、今では完全に定着した感がある。その後、特別なスキルを持たず放り出された名誉退職者たちは市場を独占するヒュンダイグループの1トントラックを購入し、慣れない行商を始めるのだという。

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 早期退職者達は、小資本で起業できるキッチンカーなどで飲食業を始めるケースが多い。従って韓国では1トントラックの販売台数を景気のバロメーターと見る向きもある。不況であるほど早期退職からの起業が増加して、1トントラックがよく売れるというわけだ。

 通貨危機以降、業界再編が進んだ韓国自動車市場において1トントラックは、「ヒュンダイ-起亜自動車グループ」の車種だけである。極論を言えば、ヒュンダイ-起亜のトラックを買うか、それとも1トントラックをあきらめるかといった具合である。やがて売り上げを独占するメーカーに対して消費者は根拠のない、漠然とした疑惑の目を向けるようになった。

 今回紹介する早期退職者の増加と独占企業に対する不信の目、これらはいずれも90年代通貨危機が発端になっているということができる。多くの韓国人が、口では「我々は通貨危機を克服した」と声高に叫んではいるが、実際はまだ癒えない傷が韓国社会、そして人々の心の中に多く存在しているのだ。

 韓国における労働者の定年年齢は、「雇用上の年齢差別禁止及び高齢者雇用促進に関する法律」(2013年5月22日改正、2016年1月1日施行)にて60歳とすることが義務化されている。

 しかし、年功序列型の給与体系を採用する多くの韓国企業にとって、高齢の社員を雇用し続けることは大きな負担である。従って現実的には40代後半、早ければ40代前半で退職の憂き目にあってしまうケースも少なくない。

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