高校野球 甲子園交流試合で絶対見た方がいい「5試合」を厳選、見どころを解説

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春の選抜が開催されていたら…

 4試合目は、大会3日目第1試合の“中京大中京(愛知)対智弁学園(奈良)”の一戦を挙げたい。両校は毎年6月に練習試合を行っているが、今年は中止になったので、甲子園がその決着の舞台となる。中京大中京は昨秋の東海大会を制し、その後に出場した明治神宮大会でも王者に輝いた。この春の選抜が開催されていたら、文句なしの優勝候補だっただろう。

 その原動力とも言えるのが、最速153キロを誇るエース右腕の高橋宏斗だ。昨秋の公式戦では12試合に登板。75回を投げ、奪った三振72、防御率は1・68という好成績だった。

 高橋は直球の威力だけでなく、ツーシームで打たせて取る技術もあり、右打者の外角に投じるスライダーやカットボールも効果的だ。

 この高橋を援護する打線は印出太一、中山礼都らを中心につながりがあり、下位打線からでも得点を狙えるのが強みだ。

 かたや智弁学園は、昨秋の公式戦で計14本塁打を放った強打で高橋を打ち崩したい。打線の中軸は、昨夏の甲子園で1年生ながら4番を務めた左打者の前川右京だ。昨秋は打率5割8分6厘、6本塁打、17打点をマークし、チーム3冠王に輝いた。

 この前川を筆頭に上位から下位まで切れ目のない打線は昨秋の奈良大会5試合で計59安打55得点を挙げ、近畿大会4強まで進出する原動力となった。

 投手陣は球のキレが持ち味の左腕・西村王雅と球威のある大型右腕・小畠一心の両2年生が中心となる。序盤からリードを許さないようにしたい。

 智弁学園が勝つためには先制点が必須となる。逆にいきなり先制点を取られると苦しい展開になりそうだ。

 最後に紹介するのはこの春の選抜に21世紀枠で出場するハズだったチームの試合だ。3校が該当するなかで選んだのは福島県の伝統校・磐城だ。大会4日目の第2試合で国士舘(東京)と激突する。

 磐城は1896年創立の福島県内屈指の進学校で有名OBを多数輩出している。磐城に入学するために“浪人”までする中学生もいるなど、逸話も多い。

 そんな名門校の野球部の中心となっているのは、エースの沖政宗と岩間涼星のバッテリーだ。沖は最速140キロ超の直球に加え、6種類の変化球を打たせて取るピッチャーだ。昨秋の公式戦では9試合に登板し、防御率はなんと驚異の0・90をマークした。これはセンバツ交流試合に出場する32校の主戦投手では2番目にいい数字となっている。その沖の女房役の岩間はチーム1の打率4割を誇る。

 対する国士舘は18、19年と2年連続秋季東京都大会を連覇した実力校である。昨秋の東京大会全6試合で二ケタ安打を放つなど、長打力は抜群だ。主将の鎌田州真と黒沢孟朗がその中心だが、勝負強い2年生の清水武蔵ら、頼りになる下級生も少なくない。

 投げでは長身の右腕・中西健登の投球に注目だ。昨秋の公式戦では8試合に登板し、4完封を含む6完投で防御率1・31をマークした。

 その大きな要因となったのが、定評のあるキレのある変化球だろう。スリークオーターから繰り出す2種類のシンカーを中心に多彩な変化球を投げ分けた投球術はお見事のひとこと。

 磐城はこの中西攻略のためにバントや積極的な走塁でチャンスを作り、4番の岩間につなげたいところ。国士館打線を押し込めれば、勝機はみえてくる。

 以上、2020甲子園高校野球交流試合全16カードのうち、注目の5試合をご紹介した。いずれ劣らぬ熱戦を期待したい。

上杉純也

週刊新潮WEB取材班編集

2020年8月9日掲載

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