大塚家具が上場廃止の猶予期間に突入 「久美子社長」が夢見るV字回復の見通し

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久美子社長は変わらない

「このため、上場廃止の猶予期間に入ったわけですが、驚くことではありません。上場廃止となる基準は明確に定められているからです。18年12月期の決算で3年連続の赤字が確定した時には、次に黒字化できなければ猶予期間に入ることは分かっていました。久美子社長は『黒字化まであと一歩』とまで言っていながら、最大の赤字となったわけです」(同)

 前出の大塚家具のリリースは、〈今後の見通し〉を以下のように掲げている。

〈(1)リアルからバーチャルへの領域拡大、(2)BtoCからBtoBへの領域拡大、(3)国内から海外への領域拡大、(4)所有からシェアへの領域拡大、(5)株式会社ヤマダ電機との提携による領域拡大に取り組んでまいります。特に今期は株式会社ヤマダ電機との提携による家具と家電での住まいのトータル提案による売上拡大に取り組み、業績の回復を図ってまいります。〉

「(1)から(4)は、これまでに決算のたびに出してきた“希望的観測”であり、これまでも上手くいかなかったもの。新たに加わったのは(5)ですね。昨年末にヤマダ電機の子会社となり、今年6月から大塚家具の店舗にヤマダ電機の家電を置くようになりました。ただ、家具と家電のコラボというものが本当に上手くいくものなのかは疑問です。確かに両方を同じ店舗に置けば、設置した部屋のイメージはしやすくなる。しかし、家具も家電も値が張る商品ですから、競合するという声もある。特に大塚家具の商品は、高級・中級指向をウリにした商品ですからなおのこと。経済全体がマイナスとなった今、家電が高ければ、家具の出費は抑えるというのが消費者の考え方でしょう。本当に〈売上拡大〉となるのかどうか」(同)

 それでも猶予期間は22年4月30日までだ。

「2年で営業利益、営業キャッシュ・フローを黒字化しなければ、上場廃止となります。営業キャッシュ・フローは営業で稼ぐしかなく、資本を入れてもダメ。言うまでもありませんが、これまで両方ともダメだったわけです。本当の経営改善が求められているわけで、そのハードルはかなり高いと言わざるを得ません。ましてや今年1年はコロナ禍でしょうから、黒字化どころではないでしょう。かといって、来年、環境が良くなったとして、黒字化できるかと言えば、それも難しいでしょう。これまで環境が悪くなかった時でも赤字にしてきた久美子社長ですから」(同)

上場廃止が狙い?

 とはいえ、せっかくヤマダ電機が親会社となり、ヤマダの三嶋恒夫社長を大塚の代表取締役会長に、取締役3名もヤマダから迎え入れたのだ。何か策はないのだろうか。

「一時的に、大塚家具の在庫をヤマダに買い取ってもらい、営業キャッシュ・フローに乗せるという手も考えられないことはない。けれど、これってヤマダにとってメリットがないんですよ。むしろ、そこまでして大塚家具を上場させておくメリットがあるでしょうか」(同)

 前出のリリースと同日に、大塚家具が発表した〈支配株主等に関する事項について〉というリリースの〈親会社からの一定の独立性の確保に関する考え方及びそのための施策〉には、以下の一文がある。

〈ヤマダ電機は、当社の株式の上場維持の方針を最大限尊重する。〉

「まあヤマダは、大塚家具の独立性も認めているし、尊重もするでしょう。ただ最近、ヤマダが久美子社長の続投を認めているのは違う狙いがあるのではないか、と観る人もいます。彼女の実力をもってすれば、上場廃止に持っていくことは簡単です。そうすればヤマダは、TOBを行うこともなく容易に“ヤマダ家具”にすることができますから」(同)

 大塚家具が上場廃止になれば、株は市場で取引ができなくなるわけだが、

「上場したまま完全子会社化するには、TOBもやらなければなりません。時価の株価にプレミアを付けなければならず、お金もかかる。上場を維持するコストも馬鹿になりません。むしろ上場廃止にしたほうが、お金もかからないわけです。もっとも、それすらヤマダにとってメリットはないかもしれません。もはや大枚をはたいて買うほどの会社ではなくなっていますからね。それでもヤマダにとって、大塚を手に入れる一番お金のかからない方法だと思います」(同)

 最近は170円台を付けていた大塚家具株だが、31日には157円まで下がった。

「大塚家具は4月を最後に月次発表もしなくなりました。今期の業績予想も未だに発表されていません。5~7月の第1四半期の結果が注目ポイントになるでしょう。彼女のことですから、“コロナにより在宅勤務が増え、家具を充実させようとする動きがビジネスチャンス”などと言い出すかもしれませんが……」(同)

週刊新潮WEB取材班

2020年8月7日掲載

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