大ヒットのNizi Projectと欅坂46の終焉 日本アイドルがここまで見限られたワケ

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NiziUヒットに見るジャニーズとの共通点と欅坂の終焉 鍵を握るのは「自己肯定感」

 JYP氏は「カメラの前でできないと思うことはプライベートでもするな」と最終メンバーたちに伝えている。「誠実・謙虚・真実」を掲げ、自分自身を律し続ける大切さを説いていた。けれどもそこに、自己犠牲という匂いはない。順位はつけるが「ライバルに勝ったか」ではなく、「過去の自分に勝てたか」で常に判断していた。

 誰かのマネはいらない。見ている人のために、媚びず惜しまず自分らしさを出せ。でもたとえ落選しても、悲観することはない。なぜなら一人一人が特別だから、と語りかける JYP氏。まさに日本アイドルの最高峰、SMAPの名曲と同じ価値観である。そういえばジャニー喜多川氏も、個性を見抜く名プロデューサーだったといえる。オーディションでは目立たずとも、「ユー、かっこいいね」「ユー、面白いよ」と持ち味を見出し、数々の人気ジャニーズアイドルが世に出ることとなった。

 前より自分らしさが出ていた、過去の言葉にとらわれずよく頑張った。JYP氏にそう語りかけられた候補者たちは、みるみるうちに輝きを増していった。自己肯定感の大切さを示すプロデューサーは、日本のアイドル界にはいなかったように思う。

 むしろ歌詞では綺麗ごとを歌わせながら、メンバーの自尊心を削り続ける実態が、ファン離れを加速させたグループもいるだろう。先日は欅坂46がグループ名改名と再出発を発表して話題となった。「大人に騙されるな」「異端だろうと我が道をゆけ」というメッセージは、若者層の共感を得るのに成功したといえる。けれども、かつてグループの顔であった平手友梨奈の変化は尋常ではなかった。不動のセンターとしての重圧なのか、笑顔どころか表情さえ出さなくなっていった彼女。きっとグループにいる自分自身を、最後まで愛せなかったのではないか。いじめ疑惑も報道されるなど、歌詞の世界観以上に暗い側面が取り沙汰され続けたグループでもあった。

 ただでさえ生きづらい世の中だ。絶望や自己犠牲を軸にするアイドルは、見ている方ももう息苦しいのかもしれない。ひるがえってNiziUのデビューシングルが「Make you happy」というのは象徴的である。自分を愛せる女性たちだからこそ、何色にも規定されない幸せな輝きを放つ。まるで虹のように。だから、見た人たちは笑顔になる。

 自己犠牲で成り立つアイドル時代はもう終わった。欅坂のメンバーたちが見る景色の先にも、色とりどりの光があふれることを祈りたい。そしてNiziUも、国境を超えた大きな虹をかけ続けてほしい。

冨士海ネコ

2020年7月26日掲載

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