突如解散「コロナ専門家会議」メンバーが語る本音 批判を浴びた“前のめり”姿勢の理由

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「やっかいなウイルス」

 脇田座長は、

「海外を見ても危機的状況が予想されるなか、専門家会議が前のめりになり、リスク管理やリスクコミュニケーションにある程度踏み込んだのも、事実だと思います。ただ、科学者としての誠実さを確保しつつ、行政とも密接にやりとりしてきたことは間違いない」

 と説明する。一方、厚労省クラスター対策班の一員でもある押谷教授は、

「そもそも公務員でない僕らが、厚労省の職員に指示を出せるわけがない。クラスター班は担当の課長が指揮をとり、僕ら専門家は厚労省や自治体、保健所の人に指示を出したりはしていません。あくまで分析するだけで、僕や西浦さんがクラスター班を仕切っているような報道がありましたが、そんなことはできません」

 武藤教授も、

「役割分担が明確だった、というのは西村大臣の言う通りです」

 と言うが、同時にその先にある問題に触れる。

「われわれは“社会にはそう見えなかった”という点が問題だった、と述べています。“理解しなかった社会が悪い”ではなく、“社会が理解しやすいように努力する”という方向で、政府に考えていただけたらと思います。たとえば、たがいに言葉づかいを徹底的に意識し、専門家助言組織は“こういう内容を政府に提案した”と言い続け、政府は専門家側の提案を“こういう理由で採用する”、または“こういう理由で採用しない”と言い続けるだけで、報道機関にとってもわかりやすくなるのではないでしょうか」

 社会は、専門家会議が政策を決めている、と受けとったのに、西村大臣のように、専門家会議と政府の「立場、関係は明らかだ」と主張するだけでは、なにも改善されないだろう。

 また、専門家たちが自らを「前のめり」と自覚していた一方で、専門家会議の提言内容が、政府や厚労省の要請で修正または削除されてきた、という報道もあった。舘田教授は、

「そういうことはたくさんありましたが、提言内容が変えられるのは当然のことだと思います。専門家会議は専門家の視点でたたき台を出しますが、政府はそれを踏まえたうえで、社会経済への影響などいろんなことを考え対応しなければいけない。提言としてどういうものを公表するかは、政府が決めることです」

 脇田座長が補うには、

「専門家は情報のその時点での確かさと重要性について考え、役人側はその情報が与える影響を考えるので、情報提供の考え方が違うことがあります。そういう場合は、役人側の意見を聞く場合もあり、構成員が議論を重ね、合意して『見解』や『情報分析・提言』にまとめあげてきた」

 とのこと。具体例を挙げれば、3月2日、専門家会議の「見解」から、「無症状の人が感染させる」という一文が削られたことがあった。武藤教授は、

「これはこのウイルスの最もやっかいな特徴で、でも有効な対策があるわけではなく、政策を考える立場から異論が出ました。専門家側は、時間的な制約や政府を説得する材料の少なさから、削除を受け入れました。しかし3月19日の『提言』には、“無症状の方が本人は気づかずに感染を広めてしまう事例が多い”と明記されています。緊急時において、対策のない不確かな情報の取りあつかいは、常に難しい問題です」

 と説く。そこからは、必ずしも専門家会議ばかりが前のめりだったわけではないことが、窺い知れる。

週刊新潮 2020年7月9日号掲載

特集「『安倍政権』に社会的距離を置かれ…『専門家会議』が怨嗟の声」より

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