赤字60億円の「RIZAP」 3人の大物経営者にも逃げられ、もはや打つ手なし?

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ひっくり返したおもちゃ箱

「RIZAPグループは、ボディメイキングや英会話、ゴルフスクールなどのコーチングだけに特化すればよかったんです。それをIT、CDの販売、アパレルなど畑違いの事業にまで手を出してしまったので、経営が行き詰まってしまったんです」(同)

 なぜ、積極的なM&Aを繰り返したのか。

「赤字会社をその会社の資産より安く買収すれば、安く買った分だけ利益を計上できます。“負ののれん”と言われているもので、見せかけの利益なんですが、決算上は利益になる。瀬戸社長はこれに味をしめて、次々に負ののれんとなる会社を買収していったのです。営業で儲からなくても、M&Aをするだけで利益を計上できるので、急成長したように見せることができるのです」(同)

 通常、企業を割高で買収したときは、のれん代を払うという。瀬戸社長が行ったのはこの逆だった。赤字企業をその資産より安く買収し、利益を計上するので負ののれん、つまり割安購入益となるわけだ。

「M&Aで有名なのは、日本電産の永守重信会長です。彼はM&Aを行う際、10年以内に元が取れるという指標を設けています。それができない会社は買収すべきじゃないとしています。ところが瀬戸社長は、そんなポリシーはない。手当たり次第に買いまくっていったのです。私の知り合いにM&Aの仲介会社を経営している人がいますが、彼によると、仲介業者から瀬戸会長はいいカモにされていたそうです。彼のところに売り案件を持っていくと、高い確率で買ってくれたといいます」

 そんなに赤字会社をたくさん抱え込んで、今後どうするつもりか。

「赤字会社を売ろうとしても、買った時の値段より安く売れば、その分損益となりますから、売れば売るほど赤字が膨らみます。とはいえ、売らずに所有したままだと、赤字を垂れ流すだけです。どっちに転んでも赤字なわけで、瀬戸社長は非常に難しい立場に来ていますね」

 新興企業のRIZAPには、経営に長けた人材がほとんどいないという。

「瀬戸社長は、経営者としてはまだまだ未熟です。そのため、これまで大物経営者を3人招聘しています。最初はジョンソン&ジョンソン日本法人の社長を務めた経営評論家の新将命氏を、2011年に招きました。新氏が経営セミナーを行っていたところ、聴講していた瀬戸社長がセミナー後、いきなり名刺交換して経営指導をお願いしました。新氏は社外取締役に就任しました。18年の6月には、カルビーを立て直した松本晃氏を招聘しています。松本氏のカルビー退任が報じられると、即日に直接電話を入れて、RIZAPへの協力を求めたのです。松本氏はCOOに就任しました。その際新氏は社外取締役を退任しています。19年6月には、住友商事で副社長を務めた中井戸信秀氏を社外取締役に就任させています」(同)

 しかし、新氏以外の2人も、1年も経たずに辞任している。

「松本氏は、RIZAPの子会社を見て回ったのですが、子会社を“ひっくり返したおもちゃ箱”と評していました。ガラクタばかりという意味です。グループの内情を知って、呆れかえったのです。それですぐにM&Aを凍結させました。彼は就任して4カ月後にはCOOを辞任しています。もう手の打ちようがなかったようですね。自分の名に傷がつくのを恐れてRIZAPから逃げ出したわけですよ」(同)

 中井戸氏も、今年3月に社外取締役を辞任している。大物経営者から逃げられ、RIZAPは今後どうなるのか。

「2021年3月期も赤字だったら、身売りするしかないでしょうね」(同)

 6月29日には、東京・紀尾井町のホテルニューオータニで株主総会が開かれる。冒頭でも触れたように昨年、瀬戸社長は株主を前にして「今期赤字は絶対にありえない。黒字にならなかったら、この場にいないということだ」と明言した。今年は、“大荒れ”の総会になりそうだ。

週刊新潮WEB取材班

2020年6月22日掲載

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