中国の “国家安全法”で香港崩壊の危機 民主の女神・周庭さん「命の保証がなくなる」

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尖閣諸島に侵入

 中国情勢に詳しい評論家の石平氏は、習近平国家主席の思惑をこう分析する。

「習近平政権は香港を支配下に置くタイミングを見計らっていた。それが“いま”だったわけです。欧米各国を襲ったコロナ禍に乗じて香港を陥れようという魂胆で“火事場泥棒”と変わりない。もし国家安全法が施行されたら、香港の活動家たちは容赦ない弾圧を受け、反中派が一網打尽にされかねません」

 さらに、産経新聞台北支局長の矢板明夫氏が付け加えるには、

「香港では、昨年の区議会選挙で民主派が圧勝しています。今年9月には日本の国会に相当する立法会の選挙を控えていますが、そこでも民主派が多数の議席を獲得すれば、予算案や重要法案が通らず、傀儡としての香港政府は機能しなくなる。このまま香港が反中派の一大拠点となって、民主化を求める動きが中国国内に飛び火することを習近平政権は見過ごせなかったのでしょう」

 一方、周さんが危惧するのは、自らの身の安全だけではない。

「新たな制度は活動家だけでなく、デモに参加しない一般市民の生活も脅かします。ツイッターやフェイスブックといったSNSが使えなくなり、インターネットで“天安門”という言葉を検索することもできなくなるでしょう。いま、こちらでは真剣に海外への移住を検討する人たちも増えています」

 かつての宗主国・イギリスのラーブ外相は、香港に住む英国発行のパスポート保持者に市民権を与える道を開くと発表。台湾の蔡英文総統も、香港からの移住者を受け入れるために対策チームを設置した。

「もちろん、誰だって本心では香港を離れたいと思っていませんよ。香港は私たちの家であり、私たちは香港を愛していますから。それでも、新制度が施行された後の香港は危険すぎる、と。そう考える人は決して少なくありません」(同)

 コロナ後の世界覇権を狙う中国のターゲットは香港だけに留まらない。

「3月以降、セオドア・ルーズベルトやロナルド・レーガンといった、米軍が誇る原子力空母で乗組員のクラスター感染が続発し、アジア太平洋地域に“力の空白”が生じました。その間に中国は南シナ海の島々を管轄する行政区を一方的に新設したのです。日本も他人事でなく、コロナ禍でも尖閣諸島周辺では中国公船による領海侵入が日常茶飯事になっている。4月には空母“遼寧”率いる艦隊が沖縄、台湾、フィリピンを結ぶ第1列島線を越える示威行動を強行しました」(政治部デスク)

 香港での“治安機関”設置をはじめ、習近平政権が“一線を越えた”ことは間違いない。

週刊新潮 2020年6月11日号掲載

特集「害毒発生源『中国』の覇権を許していいのか」より

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