香川「ゲーム条例」に弁護士会も反対 未だくすぶる「賛成意見のねつ造」疑惑

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あやしいパブリック・コメント

「1月10日に最初の素案を発表して以来、私のところには県民だけでなく、全国から電話やFAX、メールが100件ほどありました」

 と語るのは、共産党の樫昭二県議である。

「ほとんどが条例に反対意見でした。ネット社会が進化しているのに、時間制限を設けるのはおかしい。むしろ若い人こそ、ネットのスキルを身につけなければならない。今はオンライン授業を行うようになっているので、これでは授業についていけなくなる、といった内容です。大学の先生からもメールをいただきました。ネットの閲覧の時間制限をしても、それで依存症を防ぐものではない。ネットやゲームの時間は自分で決めるものであって、行政が規制するのはおかしい、と」

 しかし、パブリック・コメントは9割が賛成だった。これをどう見る。

「賛成9割というのは、どう見ても不自然です。2269人の賛成は、組織的に送られた意見と言われています。同じような文言のメールがいくつもあるそうです。また、同じパソコンからメールを何通も送ったものもあると聞いています。さらに、観音寺市の自民党市議が、周りの意見を聞いて50通送ったということも明らかになっています」(同)

 リベラル香川の竹本敏信県議がこういう。

「賛成意見の中のうち約7割は、『ネット・ゲーム依存症対策条例に賛成です』とか『賛同します』と書いてあるだけでした。反対意見ではちゃんとその理由も書かれてあるのに、7割が賛成です、賛同しますというだけなのは不自然です。しかも、同じ箇所に誤字のあるものがいくつもありました。依存症の『症』の字です」

 そもそも、このパブリック・コメントは条例の賛否を問うものではないという。

「あくまで意見を求めるものです。なのに、賛成です、だけではおかしい。おそらく誰かが名前を貸してもらい、大量に送ったのでしょう。実際、県議会にある私の控え室に、名前は言えないがある人から『名前を貸してくれ』と頼まれたと、言いに来た人もいました。パブリック・コメントは今まで1カ月間行っていたのに、今回は15日間。その方が、偽装数が少なくてやりやすかったのでしょう。賛成意見が組織的に作られたのは間違いないと見ています」(同)

 今回はこの問題あるパブリック・コメントが重要な役割を果たした。

「普通条例は、満場一致に近い賛成が取れていないと可決しません。今回の条例では賛成が22で、反対が17でした。賛否が割れているので、条例が通ることはあり得ない。ところがパブリック・コメントで9割が賛成だったので、県議から『賛成が多いんじゃから、もう決とったらええわ』という声が上がって、あれよあれよという間に可決されてしまったのです」(同)

 先の樫議員は、

「パブリック・コメントは組織的に作られた可能性が高いので、その証拠を固め、条例を見直す検証委員会を立ち上げる予定です」

 この動きに合わせるかのように5月25日、県弁護士会の徳田陽一会長が条例廃止を求める声明を発表した。以下は、その声明文の一部である。

《憲法13条が定める子ども及びその保護者の自己決定権を侵害するおそれがあり、教育の内容及び方法に対する公権力の介入は抑制的であるべきという憲法上の要請に違反し、(中略)我が国において最大限尊重されるべき「児童が文化的及び芸術的な生活に十分参加する権利」及び「子どもが意見を聴取される権利」を損なうものとして、到底、看過できない。》

 さる県議がこう言う。

「高松市の高校生と母親が、条例は基本的人権を侵害しているとして県に154万円の損害賠償を求め、高知地裁に提訴を予定しています。そもそも今回の条例は、実効性には乏しい。違反しても罰則はないし、監視もできないわけですから、コロナ禍による緊急事態宣言で家に居た子どもたちは、条例を守ってはいなかったと思います。具体的な時間制限などを入れず、単なる理念条例にすべきでした」

週刊新潮WEB取材班

2020年6月2日掲載

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