コロナ禍の今だからこそNHKは受信料を下げるべきではないのか

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2000億円を無駄づかい?

――期間限定でも、受信料割引くらいやってもいいのでは?

音:そうですよね。でも、NHKは今、受信料について口に出せる状況ではないんです。

――と言うと?

音:4月17日に総務省の有識者会議「公共放送の在り方に関する検討分科会」の初会合が開かれ、5月22日に第2回会合が開かれました。まさにNHKのあり方が議論されているところなんです。

――そんなときだからこそ、視聴者還元を訴えれば、共感を得られるのでは?

音:お金の使い方も話し合われていますからね。17年に最高裁がNHK受信契約の義務規定を合憲と認めて以来、受信契約数が確実に伸びています。つまり受信料収入が上がっているわけです。具体的には平成20年に約6400億円だった受信料収入は、600億円も増え7000億円になっています。ところが、NHKは事業支出もそれに合わせるように増加。ですから、いつまで経っても経営が苦しいからと、受信料を下げることを拒んできたんです。

――お金はあるだけ使っちゃうわけだ。だから、コロナ禍の「今だから、新作ドラマ作ってみました」と、テレワークドラマを作る余裕もあるということか。

音:ただし、NHKは今年4月からのネット同時配信「NHK+」が認められた際に、高市早苗総務大臣から宿題が与えられました。業務スリム化と受信料値下げ、ガバナンス強化のいわゆる「三位一体改革」です。現在話し合われていることが、今年度に策定する経営計画に盛り込まれるため、受信料について下手なことは言えないのです。

――有識者会議では、どんな意見が出されたのだろう。

音:新聞協会は相変わらず手厳しいのですが、年間約7000億円に上る受信料収入のうち、制作費などの抑制で2000億円近くは削減可能、抜本的な改革が必要だと。

――年間2000億円が浮けば、現在の契約件数6436万件(地上波、衛星契約を合算:20年5月15日現在)で単純に割ると、1件あたり3107円、月額にして258円となる。現在、地上契約は月額1260円(口座振替・クレジットカード継続払)なので、1002円に! Amazonプライム・ビデオが月500円、Netflixが月800円から、Huluだって月933円だ。そもそもNHKが高すぎたのだ。

音:そう簡単にはいかないでしょう。NHKは今年10月からの月額35円の値下げを発表しています。さらに下手に値下げなど言い出せば、余裕があると言質を取られることになってしまいます。

――35円では値下げと呼べるレベルではない。NHKグループ全体での内部留保は2000億円以上とも言われるが……。

音:内部留保についてもNHKははっきり明かそうとはしません。新社屋建設のためだとか、今年は東京オリンピックも予定されていましたから、その放送のためとか……言い訳もいろいろありますから。現実的には、受信料を下げるより、学校に通うことができない子供たちのために、豊富な教育コンテンツを無償で提供するという手はあると思います。

――確かにそれも大事なことではあるが……。

音:かつて、NHKは不祥事を連発し、海老沢勝二会長が国会に参考人招致までされましたが、それを国会中継しなかった。そうしたことから視聴者がNHKに反発、受信料の不払いが続出した頃、NHK職員たちは“自分たちの主人は国民なんだ。国民と向き合わないといけない”と思いを新たにしたそうです。でも、今は受信料も銀行引き落としが多いですからね。そうした心配もないのでしょう。

 NHKの令和2年度収支予算書を見てみよう。事業収入は7204億円で、そのうち受信料収入は6974億円。

 支出を見ると、地上波2波(総合、Eテレ)、衛生4波(BS1、BSプレミアム、BS4K、BS8K)、さらにラジオ3波(AM第1、AM第2、FM)と、9チャンネルを持つ国内放送費に、3437億円が費やされている。だが、およそ7000億円の受信料のうち使われているのは半分以下ということになる。その次に多いのが給与で、1144億円。さらに退職手当・厚生費には517億円が組まれている。ちなみにNHK会長の年収は3092万円(20年度)である。

 視聴者のみなさまに、“今だから”できることは本当にないのか。よく考えたほうがいい。

週刊新潮WEB取材班

2020年5月31日掲載

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