岡田晴恵教授が「夏の甲子園は開催すべき」と発言 ネット上でなぜ大論争になったのか

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「自粛厨」というネットスラング

 こうした“ネット世論”を考える際、実業家の堀江貴文氏(47)が5月15日にツイッターで行った発言が参考になりそうだ。

 中日スポーツ/東京中日スポーツ(電子版)は5月15日、「堀江貴文氏 夏の甲子園大会中止の方向に『ほんと馬鹿ばっか』 39県が正式解除に『ほんと意味のない緊急事態宣言だった』」の記事を配信した。

《今夏の第102回全国高校野球選手権大会が新型コロナウイルス感染拡大の影響で中止する方向だという報道を引用して、つぶやいた。

「ほんと馬鹿ばっか」。このツイートにはフォロワーからのコメントが殺到。「恐ろしいまでの同調圧力ですね」「かわいそうすぎる」「彼らの人生を潰してしまう事になる」》

《また堀江氏は同日、緊急事態宣言の対象から39県が正式解除されたことに触れ「ほんと意味のない緊急事態宣言だった。自粛厨は認めないのだろうけど」とも吐露。堀江氏はこれまでも「だから緊急事態宣言なんか必要なかったんだよ、はやく集団ヒステリーから目覚めましょう」などと呼び掛け、過剰な外出自粛や緊急事態宣言の不要論を説いていた》

 ここで「自粛厨」という言葉が使われている。聞き慣れない方も、少なくないだろう。インターネット担当記者が解説する。

「インターネットには、『インターネットスラング』、『ネットジャーゴン』と呼ばれる言葉があります。ネット愛好家が自分たちだけに分かる隠語を使って一体感を味わうわけです。今では普通に使われている『炎上』も、かつてはネットスラングでした。そしてネット上で、あるグループを揶揄する時に登場する『厨』という漢字は、そもそも『中坊』という言葉が原点だと言われています」

 何を幼いことを得意気に書き込んでいるんだ。お前の精神年齢は「中学生=中坊」レベルだ――こうした非難のメッセージが、言葉遊びのプロセスを通じて、「厨房」や「厨坊」と表記されるようになり、最後は「厨」という漢字1文字が使われるようになったというわけだ。

「福島第一原子力発電所事故を巡る論争では、リスク回避を重視する一派が『危険厨』、原発の安全性を重視する一派が『安全厨』と、それぞれ揶揄されました。今般のコロナ禍では感染リスクの回避を最優先と考えるグループが『自粛厨』というレッテルを貼られているわけです」(同・記者)

 甲子園の開催を主張した著名人は、岡田教授だけではない。例えばデイリースポーツ(電子版)は5月3日、「張本氏、『秋でも冬でも』甲子園開催を主張」との記事を掲載した。

 同じ日に放送された「サンデーモーニング」(TBS系列・8:00)で、野球解説者の張本勲氏(79)が、開催を主張したことを伝えたものだ。発言内容を記事からご紹介する。

《「多少(開催が)遅れても、秋でもね。今暖冬だし、多少冬に入ってもやるように、2段、3段考えていただきたい」》

 甲子園の中止が決定される前だったという点は注意が必要だが、岡田教授の発言に比べると、ツイッターなどでの反応は少なかったようなのだ。

 やはり「岡田教授が甲子園の開催を主張した」という事実が大きかったと考えられる。そして発言がこれほどの議論を巻き起こしたのは、自粛厨の反発も影響を与えているようだ。

「岡田教授はPCR検査の不備や、発熱外来の整備を指摘したりするなど、一貫して日本における新型コロナ対策は手ぬるく、不充分であると訴えてきました。そうした主張は、自粛厨と相性がよかった。つまり自粛厨の理論的支柱になっていた側面があったでしょう。甲子園中止の決定に自粛厨が賛同するのも、開催中止は自分たちの主張が正しかったことを証明してくれるからです。ところがイメージに反して、岡田教授は甲子園の開催を主張した。この意外性が、ネット議論の活発化させたのは間違いないと思います」(同・記者)

週刊新潮WEB取材班

2020年5月25日掲載

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