御年94歳「橋田壽賀子」が語るコロナ観 巣ごもり生活おくる

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“非常下の日常”をいかに生きるべきか。長年にわたり、人生の浮沈を活写してきた御年94の橋田壽賀子さん。大好きな「クルーズ旅行」もお預けとなる中、意外な“巣ごもり生活”を明かしてくれた。

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「戦争も貧しい時代も、日本が世界のトップだった頃も経験して、最後にこんな目に遭うとは……。といっても、むしろ優雅な日々を送っているんですよ」

 とは、ご本人。

「不謹慎ながら、今の状態が私には一番幸せなんです。“外に出てはいけない”という大義名分があるので人と会わないで済む。来客もないからお化粧もお洒落もしなくていい。一日中普段着でのんびりできるから」

 本来なら自身の誕生日である5月10日には、優れたテレビ作品や俳優に贈られる恒例の「橋田賞」授賞式が予定されていたのだが、

「実は私、橋田賞が一年で一番イヤなの。皆さんにご挨拶しなきゃならないから。でも今年は、授賞式もパーティーも中止になったから、よかったですよ」

 そう笑い飛ばすのだ。

「家の周りでは、ウグイスが鳴いて平和です。ようやく好きなことができる時間が持てたので、BSで昔のドラマばかり見ています。中でも、私がファンで『おしん』にも出て頂いた渡瀬恒彦さんの『十津川警部』シリーズ、『タクシードライバーの推理日誌』は、分かりやすくて面白い。他には『相棒』とか、柴田恭兵さんの『越境捜査』も観ています。私は“人殺しと不倫は書かない”と言ってきましたが、他人の書いたサスペンスを観るのは好きなのです」

「有為転変が」

 むろん、コロナには警戒心を緩めておらず、

「これまではどこか他人事のように思っていましたが、志村けんさんが亡くなって怖いと思い始めました。もし自分が罹ったら周りに迷惑をかけるでしょ。『どこで何をしたの』とも言われそうで。先日も胃が痛くなって、長くお世話になっているジムのトレーナーの先生に話したら『コロナストレスですね』って。楽しく過ごしていても、知らずにストレスを感じているのでしょうか」

 それはご自身の作品とも無関係ではなく、

「毎年、敬老の日に『鬼』(『渡る世間は鬼ばかり』)を放映していますが、コロナの先が見えないので今年は脚本の締切りを遅らせてもらっています。例えば旅行代理店を経営する岡倉家三女(中田喜子演じる高橋文子)はおそらく破産するだろうし、様々な有為転変があると思います」

 とのことで、

「これをどこまで書けばいいのか、敬老の日には事態が収まっているのか。書いても今、撮影ができるかも分かりませんよね」

 その橋田さんがとりわけ残念がっているのは、長年の趣味である「クルーズ船の旅」を奪われたことだ。ダイヤモンド・プリンセスをはじめ、世界各地で感染源となっており“3密”の典型でもあるわけだが、

「これまで延べ千泊はしています。最後に行ったのは、お正月のグアム・サイパンのニューイヤークルーズ。本来なら4月にも、103日間の予定で世界旅行に出るはずだったんですけど……。でも、家にいられる幸せがあるから」

“物は考えよう”が「橋田流巣ごもり術」だというのだ。

週刊新潮 2020年5月7・14日号掲載

ワイド特集「コロナの陰に『オンナの事件』」より

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