「コロワイド」の「大戸屋」買収計画 コロワイド社長の発言が大戸屋ファンを失望させた訳

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 外食大手の「コロワイド」による、定食チェーン「大戸屋」買収に向けた動きが、大詰めを迎えている。昨年10月に大戸屋創業家の持っていた18%強の株式を取得して筆頭株主となり、取締役7人をコロワイド側から派遣する株主提案をすると発表。さらに、これまであまり表に出なかった社長がテレビに登場した。ところが、これが大失敗で、大戸屋ファンからかなりの不評を買っているのだ。

 コロワイドは「手作り居酒屋 甘太郎」に始まり、「牛角」や「かっぱ寿司」、「フレッシュネスバーガー」などなど買収に次ぐ買収で、国内2700店舗を展開。売上高2400億円は業界4位という外食大手だ。

 一方、池袋の小さな定食屋からスタートした大戸屋は、和定食を中心とする「大戸屋ごはん処」を全国350店舗で展開。売上高は250億円で、コロワイドの10分の1程度である。

 様々な業態を展開するコロワイドだが、定食チェーンはこれまでなかった。同社にとっては、これまでと同じ買収話の1つかもしれない。が、今回はちょっと事情が異なると言うのは業界通だ。

「コロワイドは株式を大戸屋の創業家から入手しています。大戸屋には“お家騒動”があったことを覚えていますか。実は、あれがまだ続いているということなんです」

 話は5年前に遡る。15年7月、大戸屋の創業者でカリスマ経営者と呼ばれた三森久実氏が57歳の若さで急逝し、お家騒動が勃発。テレビドラマも顔負けと話題になった。

「長男の智仁氏は、大学を卒業後、信託銀行に2年務めた後、大戸屋へ入社。久実氏が亡くなる1月前に常務取締役に就任していました。将来の社長ということにもなるのでしょうが、彼が大戸屋へ入社してから2年しか経っていなかった。現場経験がわずかしかなかったが、それでも1年で執行役員、2年でNo.4に出世したわけです。カリスマと言われた久実氏も病を抱えて、少し判断を誤ったのでしょう。結果、26歳の智仁氏の処遇を巡って、経営陣と創業家(智仁氏と久実氏の妻・美枝子氏)が対立したわけです。その年の9月に創業家が起こしたのが“お骨事件”でした。美枝子夫人が久実氏の遺骨を持ち、その後ろで位牌と遺影を手にした智仁氏が社長室にやってきて、遺骨を社長の机に置いた美枝子氏が『智仁を社長せよ』と迫ったのです」(同)

 この一件は、第三者委員会がまとめた報告書にも明記されている。もっとも、いくら創業家がどうこう言っても、大戸屋はすでに上場企業である。ろくに経営の経験もない26歳の若者を、「ハイそうですか」と認めるわけにはいかなかった。

「何度も調停がもたれ、24年6月に智仁氏の社長就任という合意が結ばれました。これも上場会社としては異例なことですが、経営陣も10年ほど経験を積ませた上でという条件付きで応じたわけです。しかし、これを一方的に破棄したのが智仁氏で、16年に退職しました」(同)

 黙って働いていれば、34歳で社長になったはずなのに……。

「智久氏には現金が必要でした。久実が亡くなり、母子でおよそ19%の株式を相続した。それに対し、相続税は8億円ほどと言われていました。会社側は17年の株主総会で創業者功労金という名目で2億円を出すことを決めましたが、それでも足りなかったようです。それで創業家は大戸屋の株を売り払ったのでしょう」(同)

 その売却先がコロワイドだったというわけだ。

「大戸屋の株主総会は6月25日です。大戸屋は拒絶していますが、コロワイドはそれまでにM&Aを固めようとしているのでしょう。株主総会ではコロワイド側から役員派遣を提案するつもりですが、非常勤の非業務執行役員の候補として、智仁氏の名もあります。“創業者精神の継承と外食の新規領域のかかる事業経験”を推薦理由に挙げていますが、彼に創業精神などあるのか疑問ですね。父親の会社を散々かき回して出て行った人ですから」(同)

 まだ、社長になろうとしているのだろうか。

「株も手放してしまいましたからね。コロワイドはM&Aが成功したら、蔵人金男会長の息子を社長にしようとしているようです。また、同社は大戸屋の株主を対象に、大戸屋のグループ入りに賛同するかしないかというアンケートを実施しました。3000円分の食事券付きで……。品のないやり方というか、これだけでもどんな会社か分かりそうなものですが」(同)

 そのコロワイドの野尻公平社長が4月27日、「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)に登場した。

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