クルーズ船112人治療で「院内感染」ゼロ!「自衛隊中央病院」はなぜ奇跡を起こせたのか

国内 社会 週刊新潮 2020年4月30日号掲載

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 各地で院内感染が相次ぎ、医療崩壊が刻一刻と迫りつつある。いや、地域に限定すれば医師ら多数に感染が出た拠点病院が活動を停止したり、救急搬送が困難を極めたりしており、すでに医療崩壊が始まっているとの見方もある。

 そんな中、世界レベルでの“奇跡”を起こした医療機関がある。

「最も注意した点は院内感染。これが起きた時には、診療継続そのものが不可能になることから、まず、何よりもそれを出さないことを優先しました」

 112人もの新型コロナウイルス感染者を受け入れて治療し、4月上旬までに多くの患者を退院させたのは、東京都世田谷区にある自衛隊中央病院。しかも医師団約20人と看護師ら約60人の医療スタッフは誰一人感染しなかったというのだ。

 冒頭の発言は同病院感染対処隊診療部新型コロナウイルス感染症対応チームのリーダー田村格(かく)・1等海佐の言葉だ。

 各地で院内感染が多発、病院自体がクラスターの発生源となっている今、新型ウイルスとの“緒戦”を勝ち抜いた彼らの言葉は重い。テレビなどで専門家がしばしば口にし、一般常識となりつつある見方を覆すような内容も含め報告したい。

 中央病院は防衛大臣直轄で最高レベルの第1種感染症指定医療機関だ。病床は500床あり、田村1等海佐はじめここで働く医師は医官、看護師は看護官、薬剤師は薬剤官などと呼ばれる自衛隊員だ。彼らは一般の医療従事者と変わらない国家資格を持つ。

 112人の患者の内訳は、クルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号乗船者と、新型コロナウイルスが最初に確認された中国・武漢からのチャーター機による帰国者だ。

 チームの医療記録となる報告書はクルーズ船の104名について記され、医療従事者向けに病院のサイトから発信もされている。

 今回、初めてチーム長の田村1等海佐に取材することが出来た。方法はメールによる一問一答だ。現在、新たな国内感染者を受け入れ、治療を指揮する激務の中、応じていただいた。

「まだ退院者が出ず患者が最も多かった時、約20名の医師を4チームに分けて対応しました。看護師らを含む各々の医療スタッフも入院患者の全体状況を見ながら適宜増減し対応に当たりました」(田村1等海佐、以下同)

 1月30日、武漢からの帰国チャーター機の感染者を迎えたのを皮切りに、2月に入るとダイヤモンド・プリンセス号からも乗船者の感染者を受け入れた。

 患者の平均年齢は68歳で男女はほぼ半々だった。クルーズ船の乗員は主に30~50代。乗客は70代が中心だった。

 その半分近く(48%)に基礎疾患があった。多い順に、高血圧など心血管系、甲状腺疾患など内分泌系、糖尿病、呼吸器系、がんとなっている。

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