【特別連載】引き裂かれた時を越えて――「二・二六事件」に殉じた兄よ(9)満州事変前夜 引き裂かれた時を越えて――「二・二六事件」に殉じた兄よ

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 山形県酒田市から国道7号を日本海沿いに北上すると、東北の名峰・鳥海山のふもとの遊佐町に至る。道を脇に折れて少し急な坂道を上ったところに、うっそうとしたクロマツの林に囲まれた広場があった。

 遠い海鳴りのほかは時が止まったような薄暗い一隅に、直径10メートルもある円形のこんもりした塚が築かれ、見上げるような石柱が立っている。刻まれた文字はただ「南無妙法蓮華経」のみ。塚の隣には墓碑銘のように、

「私はただ仏さまの予言と日蓮聖人の霊を信じているのです」

 と彫られた石がある。...

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