NY在住作家が綴る「自宅待機5週間」で私に起こった不調について

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感染防止か、経済再開か

 クオモ知事によれば、NYでは感染率が1.4%のときに都市封鎖し、それが現在は0.9%まで下がってきた。武漢では0.3%になった時点で、都市の封鎖を解除した。だから、NY州はまだ警戒を怠りなく、ワクチンが開発されるまで十分に感染状況を見ていく必要がある。もし不用意に経済再開すれば、再び「第2波」が襲来して、もっと悪化するかもしれないと言う。学校は6月の学年末まで休校が延長された。

クオモ知事:「リンカーンは言いました。『A house divided itself cannot stand』(分断された家は立ち行かない)』と。今は第二次世界大戦以来の最大の危機なのです。これは私の個人的見解ですが、人々は毎日、不安と心配と恐怖と怒りを感じています。今は政治を論じる時間はない。私は政治とは無関係です!」

トランプ大統領:「リンカーンの言葉は私だって知っている。だが、別の状況で言ったのじゃないか」

 アメリカでは、しばしば政治がボクシングに例えられる。トランプ大統領の口汚いツイッター発言は無視するとしても、トランプ大統領とクオモ州知事の記者会見での発言は、まさに激しいパンチの応酬だ。これぞアメリカ流かと妙に感心して以来、TVの記者会見を見るのが前より楽しみになった。

 トランプ大統領は、17日に経済再開の手順を正式に発表して以来、それに背中を押されて早急な経済再開を要求するデモ隊に対して、「よくやっている!」と歓迎した。「再開すれば、アメリカ経済は速やかに回復する!」と、秋に控えた大統領選に向けて、すこぶる威勢がよい。誰もが予測する経済不況の到来を、見て見ぬふりをしているようだ。

 感染防止か、経済再開か。かつてアメリカ合衆国が経験した深刻な地域対立――南北戦争が、今まさに再燃したかのような由々しき事態に直面している。

譚璐美(たんろみ)
作家。東京生まれ、慶應義塾大学卒業。現在はアメリカ在住。元慶應義塾大学訪問教授。日米中三カ国の国際関係論、日中近代史をテーマに執筆中。著書に『ザッツ・ア・グッド・クエッション! 日米中・笑う経済最前線』(日本経済新聞社)、『帝都東京を中国革命で歩く』(白水社)、『日中百年の群像 革命いまだ成らず』、『戦争前夜 魯迅、蒋介石の愛した日本』(ともに新潮社)など多数。

週刊新潮WEB取材班編集

2020年4月22日掲載

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