PCR検査の中身を知っていますか? 韓国の推奨政策と「数だけ議論」のワナ

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韓国の甲状腺がんスクリーニング

大場:「数だけ議論」に批判的吟味が必要であることには賛同します。テレビ出演しているコメンテーターたちの中には、PCR検査をもっと増やさないと新型コロナウイルス感染者の全体把握ができないから国内発表データはいい加減だ、お隣の韓国はどんどんPCR検査をやることで感染コントロールに成功しているじゃないか、と主張をされる人たちがいますよね。

 4月15日13時現在までの最新データをみると、国内でのこれまでのPCR検査実施数は9万4236件に対して、陽性者が8626人。うち死亡者数178人(致死率 2.1%)。一方、韓国ではPCR検査数53万4552件に対して、陽性者1万613人。うち死亡者数229人(致死率 2.2%)。検査件数では圧倒的に韓国の方が上回っていますが、致死率はほとんど一緒。人口が異なるので、人口100万人あたりの死亡者数をみると、日本 0.14に対して韓国 0.44 と日本の方がまだよいというファクトを冷静にみるべきでしょう。

 韓国のPCR推奨政策をみて、すぐに思い浮かべたのが甲状腺がんスクリーニングの話です。国策として、甲状腺超音波検査を広く普及させたことで、もともと予後が良好であるはずの甲状腺がんがたくさん発見されたわけです。

 それと同じような事例が、福島県内でも起こりました。東日本大震災時の原発事故による放射線被ばくリスクを懸念し、甲状腺超音波検査をどんどん介入させたことで、多くの甲状腺がんが見つかり、対象が小児であってもたくさんの手術が行われたようです。これを得策ととるのか愚策ととらえるのかは意見がわかれるでしょうが、検査を増やせば増やすほど疾患数が増えるのは新型コロナウイルスにも当てはまりますね。

 新型コロナウイルスに感染しても、ほとんどが風邪ひき症状のままで終わってしまうのだと思います。現在、PCR陽性者の半数以上を占める「無症状あるいは軽症者」に対して、あまりヒステリックになり過ぎるのもどうかと。すべて要入院とされると、貴重なベッドも人も取られてしまうわけですから医療崩壊の原因になりうるわけです。

 人口の異なる他国とデータを比較する際は、致死率や人口100万人あたりの死亡者数に注目するのがよいでしょう。
https://coronavirus.jhu.edu/data/mortality

週刊新潮WEB取材班

大場大 おおば・まさる
1999年 金沢大学医学部卒業、2008年、医学博士。2016年より東京オンコロジーセンター代表を務める。2009年-2011年がん研有明病院。2011年-2016年、東京大学医学部附属病院肝胆膵外科。2019年より順天堂大学医学部附属順天堂医院肝胆膵外科非常勤講師。専門は、外科学、腫瘍内科学、消化器病全般。

増富健吉 ますとみ・けんきち
1995 年金沢大学医学部卒業、2000年、医学博士。2001年-2007年 Harvard大学医学部Dana-Farber癌研究所。2007年より現職。がん細胞の増殖と、コロナウイルスを含むRNAウイルスの増殖に共通の仕組みがあることを突き止めており、双方に効く治療薬の開発が可能かもしれないと考えている。専門は、分子腫瘍学、RNAウイルス学、RNAの生化学、内科学。

2020年4月17日掲載

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