専門家はほぼゼロ「コロナウイルス研究の失われた10年」を考える

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ワンチームとなって

大場:コロナ、コロナと気軽に言ってしまいますが、コロナウイルスについて一度整理をしておく必要がありますね。人から人へ感染が蔓延する「風邪ひきウイルス」のコロナは4種類あって、HCoV-229E、HCoV-OC43、HCoV-NL63、HCoV-HKU1となります。

 HCoVはHuman Coronavirusヒトコロナウイルスの略称。一方で、動物(宿主)から人へ感染して疫病となる「重症肺炎ウイルス」が、かつてのSARS-CoV(重症急性呼吸器症候群コロナウイルス)とMERS-CoV(中東呼吸器症候群コロナウイルス)。SARSの宿主はキクガシラコウモリで、MERSのそれはヒトコブラクダと確認されている。

 今回のコロナはまさに2019年新型(novel)重症肺炎コロナウイルスで、2019-nCoVとこれまで表記されていたようですが、国際ウイルス分類委員会で最近「SARS-CoV-2」と命名されました。SARS-CoV-2によって発症した疾患群をまとめて「COVID-19(coronavirus disease 2019)」と世界保健機関(WHO)が定義しています。「コビッド ナインティーン」という呼び方になります。

 あと、表面にいくつもの突起が付いたウイルスの電子顕微鏡写真がよくメディアにも登場してきますよね。あれは、ウイルスの形が王冠「crown」に似ていることからギリシャ語で王冠を意味する「corona」という名前が付けられたようです(国立感染研究所 コロナウイルスとはhttps://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/9303-coronavirus.html)。プラス鎖の一本鎖ゲノムを有した「RNAウイルス」です。

増富:では、「専門家」の話に戻ります。公衆衛生学、疫学、医療統計学、コロナウイルスに比較的近いウイルスとして分類されているインフルエンザウイルスやC型肝炎ウイルス、先進国ではほぼ根絶に近い状態にまでコントロールすることに成功しているポリオウイルスなどのウイルス学。これらに関する知識のある先生方がワンチームとなって、これからの打開策を打ち出してもらうしかないというのが実情だと思いますよ。

大場:要するに、コロナウイルスを専門的に取り扱う研究者が日本にはほぼ不在だということを自覚したうえで、各分野の専門家がそれぞれ知恵を出し合いながら、多職種連携のチーム体制が必要だということですね。先の岡田氏も公衆衛生学の専門家なのかもしれませんが、そこだけで全てを語ろうとするからいろいろ齟齬が生じてしまうのかもしれないですね。

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