緊急事態宣言を実効あるものにする方法 理解すべき日本人の“性格”とは

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日本人は「現金」な性格

 日本人の人間関係を規定する重要な概念の1つに「義理」があるが、精神病理学者の芝伸太郎氏は「『義理』は世間から受けた何らかの恩恵(借金)に対する負い目のような感覚であり、『受けた恩はなんとしてでも返さなければならない』という意識が強烈に生まれる」と指摘している。日本人に行動変容をもたらすためには、お金の力が極めて大事なのである。

 行動経済学者の依田高典氏が2012年に京都府で実施した大規模な節電実験では、内的動機(節電をお願いする)よりも価格メカニズムを活用した外的動機(需要に応じた変動型の電気料金制の導入)の方が効果が大きかったことが明らかになっている。

 誤解を恐れずに言えば、現在の日本人は「現金」な性格なのである。

 クラスター対策班が「夜間を中心に営業する接客業や飲食店等で感染が広がっている可能性が高い」と懸念視していることから、前回のコラムで東京都に対して「休業補償付き歓楽街封じ込め」策を提案したが、東京都も休業要請に従う事業者について補償を行う方針を固めたようだ(4月3日付日本経済新聞)。

 その際忘れてはならないのは、緊急事態宣言が発令された日本はもはや「平時」ではなく「有事」であるということである。厚生労働省が7日、臨時休校の影響で仕事を休まざるを得なくなった保護者への休業補償の対象に関して、風俗業従事者を対象に加える決定を行ったように、クラスター対策班が「ナイトクラブや風俗店がメガクラスター(非常に大規模なクラスター)発生の温床である」と判断すれば、東京都はこれまでの前例にとらわれることなく速やかに休業補償を行い(政府が財政支援を行うのは当然である)、新型コロナウイルスのオーバーシュートをなんとしてでも回避すべきである。

 緊急事態宣言の発令を実効あるものにするためには、このような発想の大転換が必要なのである。

藤和彦
経済産業研究所上席研究員。1960年名古屋生まれ、1984年通商産業省(現・経済産業省)入省、2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官)、2016年より現職。

週刊新潮WEB取材班編集

2020年4月8日掲載

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