首都「ロックダウン」で何が起こるか 合理性なき封鎖、日本ならば経済との両立可能

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不幸な指導者が行うもの

 三浦さんはまた、イギリスのジョンソン首相が、当初、経済は回すと表明しながら批判を受け、ロックダウンの方向に舵を切った例を挙げ、こう続ける。

「ジョンソン首相は専門家の意見を取り入れ、高齢者や持病がある弱者を自宅に隔離し、感染すると危険な人たちをできるだけ守る方策を考えたのに、大衆や知識人、ジャーナリストらの反対に遭って撤回に追い込まれた。イタリアも初動で失敗して政治的リーダーシップを傷つけられ、極端なロックダウンに走ったのは明らかで、要するにロックダウンは、政治的に追い込まれた不幸な指導者が、必ずしも合理性がないと知りながら、批判を避けるために行うものです。東京はあらゆる観点から、それに該当しません」

 3月30日には、日本医師会が「早く緊急事態を宣言したほうがよい」と訴えたが、おそらく彼らは、経済をはじめとする損失とのバランスを測るすべをもたない。ところが、都知事や政府が圧力に負け、自ら恐慌を呼び寄せるようなことを、していいものなのか。

 現在、新型コロナウイルスに対しては悲観論が蔓延している。浜松医療センターの矢野邦夫副院長は、

「テレビで、話したりくしゃみをしたりした後のマイクロ飛沫を映像で示し、空気中に非常に多くの飛沫が飛んでいる印象を与えていた。多くの人はマスクの重要性を感じると思いますが、マスクは人にうつさないために有用でも、予防にはなりません。こまめな手洗いが一番の予防法で、飛沫より椅子や机、手すりについたウイルスのほうが怖いのに、手洗いがおろそかにならないか心配です」

 と語るが、こうした偏った情報の集積も、誤った政治判断につながりうる。

 ここであらためて、新型コロナウイルスはどの程度怖いのか、確認しておきたい。長野保健医療大学の北村義浩医師によると、

「現在、日本では死亡率が3%程度ですが、80歳以上は15%、70代で7~8%ですから、ご高齢の方には危険性が高い病気といえます。一方、季節性インフルエンザの死亡率はせいぜい0・1%程度で、高齢者でも1%弱。死亡率が高い新型コロナウイルスのほうが怖いと思います。しかし、別の視点で考えてみましょう。季節性インフルエンザは年間3千万~4千万人、日本の人口の3分の1くらいがかかりますが、日本で新型コロナにかかったのは、まだ2千人ほど。少ない検査数を考慮しても、せいぜい1万~2万人です。死亡率は低くても、かかりやすさを考えれば、インフルエンザのほうが怖いという見方もできますね」

 ちなみに、いくら死亡率が低くても、インフルエンザの死者数は、日本だけで年間3千人を超えることがある。それが、今年はコロナウイルス対策で手洗いやマスク着用の習慣が浸透し、千人程度で済んでいる。それでもなお、ロックダウンによって恐慌を招こうというのか。

週刊新潮 2020年4月9日号掲載

特集「『コロナ戦線』異状あり 首都『ロックダウン』で何が起こる!?」より

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