新型コロナで異常感染「イタリア」の特殊事情

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 東京五輪の延期発表に、それどころではないと、だれだって思ったことだろう。感染者が9万人、死者が1万人を超えたイタリアの惨状を眺めるかぎりは。新型コロナウイルスの脅威におののくのも無理はないが、イタリアの現状は、かの国の特殊事情によるもの。日本人が恐れすぎるにはおよばない。

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 イタリアは中国が推進する巨大経済圏構想「一帯一路」にG7で唯一、われ先に参画し、「中国が欧州を支配する契機になる」と懸念されたが、その通り、中国発のウイルスに支配されてしまった。昨年イタリアを訪れた中国人観光客は600万人に達し、1月末、イタリアで最初の症例が見つかったのも、武漢からの2人の観光客だった。

 とはいえ、その後3週間以上、感染者は出なかった。2月21日、北部ロンバルディア州のコドーニョで、38歳の男性が陽性と診断されてから、感染が爆発的に拡大したのだが、

「実は、コドーニョなどではそれ以前から、咳をする人が増えていたんです」

 と、フィレンツェ在住のジャーナリストが言う。

「あの辺りは工業地帯で空気が悪く、普段から咳をする人が多い。だから今回も医療関係者たちは、病院を訪れた患者の新型コロナウイルスへの感染を疑ったりはせず、隔離しないで放置しました。ところが、インフルエンザと思っていた患者が、3週間たってもよくならないどころか悪化したのを不審に思った麻酔科医が、“もしや”と思って検査したら陽性反応。そのときはすでに、感染は大規模に拡大していたんです」

 医師の油断が院内感染を招いたのは、言うまでもない。また、ロンバルディアの州都であるミラノ在住のライターは、こんな話を。

「2月19日、ミラノのサン・シーロ・スタジアムでのアタランタ対バレンシア戦で、4万2千人のサッカーファンが体を寄せ合って応援し、感染が拡大したという説が出ています」

 しかも、イタリア人の生活習慣は、感染を広げたいウイルスにとって、実にありがたかった。先のジャーナリストによれば、

「挨拶からして、しっかりハグし、両側の頬をくっつけ合うか、頬にキスするのが基本で、とにかく他人との距離が近い。また、マスクをしなかったのはもちろん、帰宅時に手を洗う習慣以前に、手を洗うという発想すらなかった」

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